シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
予見−『ヘンリ−4世』(第2部)3幕1場 

 

ここ数十年の間に出生数が半減して、就職する者の数が退職する者の数を下回っているという。

 

政府はここでまた一つ愚策を加えた、人手不足を5年間で外国人労働者を35万人増やすらしい。

 

政権は不勉強な上に現場感覚がないから、少子高齢化対策の切り札にできると思ったようだが、低賃金労働に依存する企業は日本語、資格問題、家族の受け入れ問題を負わされて、安く使えるどころか、廃業に追い込まれるのではないか。

 

受け入れ態勢がまるでできていないのだ

 

女性活躍のときなのだが、そういう風には捉えない。

 

この国には仕事をしたいができない女性が大勢いる、資格を活かせない、子育てと両立できない、そんな女性が。

 

働き方改革とか、女性活躍社会とか、男女共同参画などとは言うが、職場を改善して女性の活躍の場を広げ就業率を高めようとは考えない、妊婦の医療費を完全無料化するという発想もない。

 

日本の女性の地位はOECD(経済協力開発機構)諸国のなかの最悪最低レベルにあるにもかかわらず、何をどうしたらいいのか分からない、社会が分断され、超高齢化と超少子化を招き、他殺と自死の常態化する社会になってもなお。

 

来年度予算は100兆円超、税金の30%強が高齢者対象の年金・医療・介護の社会保障費に使われ、安全保障は目ん玉が飛び出るほど高額のイージスやF35を揃えることだと考える。

 

国難と言いながら子育て費用に使われる財源はなくなり、多くの子どもたちが育児放棄に遭って、朝食すら食べられない。

 

未来の出来事が書き込まれる運命の書には破綻寸前の国の姿がありありなのだが、それを正視する目がない。

 

息子を討ち死にさせてしまったノーサンバランド伯は憤激して前後の見境なくヨークの大司教の反乱に合流、王ヘンリー4世は謀叛に悩み、疲れて、聖地への十字軍派遣を夢見るばかり。

 

 

 ならばわが王国の体の具合に気づかれたであろう、

 いかなる病状にあるか。なんといういまわしい病い、

 いのちを脅かして、心臓の辺りにまで来ている。

ウォリック ほんの体だけ、調子が悪いだけのもの、

 本服は期して待つべきでしょう、

 医者の注意を守り、いささか医薬を用いますれば。

 おお神よ、運命の書を読み取る力があれば、

 そして時の運行を見る力があれば

 山々を真っ平にし、乾いた大地が

 (その堅牢さに飽きて)溶け

 大海原に化してしまうのを

 有為転変する酒を注がれて。まだ10年と経っていない、

 リチャードと、ノーサンバランド、御両人が、

 戦場で相対した。それからわずか8年、

 同じくこれもパーシー、わが腹心として、

 いわば、兄弟同様に、骨折ってくれた、

 そう、私のために、リチャード王に対してさえ、

 (ネヴル、確か卿だったな居合わせたのは)、

 リチャードは、目に、涙を一杯浮かべて言った、

 ノーサンバランド、そなたは梯子役だ、

 私の従弟ボリンブルックを王位に就かせるためのと。

 だが王位のほうから頭を垂れてきて、

 私も王座にくちづけせざるを得なくなったのだ。

 こんな日が来るのを(彼は予見していた)。

ウオリック 人の生涯にはみなそれぞれの歴史があり、

 過ぎ去った時代の姿をそのままに写し出します。

 これを読むことさえできれば、

 リチャード王の場合も見事に予見されたのです、

 陛下を措いて他にないと。

 

               3幕1場

 

 

King. Then you perceiue the Body of our Kingdome,

 How foule it is: what ranke Diseases grow,

 And with what danger, neere the Heart of it?

War. It is but as a Body, yet distemper'd,

 Which to his former strength may be restor'd,

 With good aduice, and little Medicine:

 My Lord Northumberland will soone be cool'd.

King. Oh Heauen, that one might read the Book of Fate,

 And see the reuolution of the Times

 Make Mountaines leuell, and the Continent

  (Wearie of solide firmenesse) melt it selfe

 The beachie Girdle of the Ocean

 With diuers Liquors. 'Tis not tenne yeeres gone,

 Since Richard, and Northumberland, great friends,

 Were they at Warres. It is but eight yeeres since,

 This Percie was the man, neerest my Soule,

 Who, like a Brother, toyl'd in my Affaires,

 Yea, for my sake, euen to the eyes of Richard

  (You Cousin Neuil, as I may remember)

 When Richard, with his Eye, brim-full of Teares,

 Northumberland, thou Ladder, by the which

 My Cousin Bullingbrooke ascends my Throne:

 But that necessitie so bow'd the State,

 That I and Greatnesse were compell'd to kisse:

 The Time shall come (thus did hee follow it)

War. There is a Historie in all mens Liues,

 Figuring the nature of the Times deceas'd:

 And by the necessarie forme of this,

 King Richard might create a perfect guesse,

 Vnlesse on you.

 

    ranke = loathsome   distemper'd = sick    Continent = Dry land

    diuers = various    Neuil = Earl of Warwick   Figuring = Showing   

    deceas'd = past

 

 

王は因縁によって生み出される有為無常の運命の書をめくれば未来に起こる出来事を予見できる(follow, create a perfect guesse) と考えている、ウォリック伯も王同様に未来を見ているが、忖度して胡麻をすり潰している。

 

放課後子ども教室を始めたときの1年生がいま中学3年生、中学生対象の寺子屋と称するところで一人に巡り合い、ほかの子たちはいまどうしているだろうかと思い巡らすことが。

 

過去のできごとから学ぶことがあったろうか、体験を積んだろうか、挑戦することがあったか、しくじって、凹んで、それでもその先に何かを見つけて、この世が大きく広がっているだろうか、などと。

 

子どもだろうが大人だろうが、予知能力はしっかりと磨かなければなりません。

 

子どもたちは運命の書を読み取れるだけの読解力をつけたか、わが人生の道程を見透し、行く末の苦境を知り、書物を閉じて、死にたいと願ってはいないか、まさかとは思うが、不登校中学生10万超、保健室や校長室に登校する者を含めると30万人超、10人に1人。

 

子どもたちはどこまでも自由に考え、自由に行動していい、制約されてはならない、制限されてはならない、どんな環境に置かれても学び考える機会が保障されていなければならない。

 

知る自由、考える自由、体験する自由、何かが好きになる自由、誰かが好きになる自由、自由のぜんぶが保障されていいのです。

 

子どもを産み育てる女性には不安のない安定した生活が保障されなければなりません。

 

子どもには教育の機会が平等に与えられなければなりません。

 

母親と子どもはみな希望を持って生きてほしい、にもかかわらず、劣悪な環境に置かれて苦しんでいる女性と子どもが多過ぎる。

 

満足な仕事に就けず、満足な食事にありつけず、学べず、自分の思いを確かめる心のゆとりもなく、多くの女性と子どもが不本位に自分の前途を壊している。

 

だから、言いたくなるのです、高齢者は社会保障費を膨らますな、運動して、医者や薬に頼らない身体をつくって、地域のボランティア活動を楽しく面白くやってくれ、そこに生き甲斐を見い出して。

 

もちろん良質の外国人受け入れは不可逆の流れだろう、彼らに日本人と同等の権利を保証すべきだ。

 

現政権は目先の事象に振り回されて間違いばかり繰り返している、外国籍、女性、子ども、高齢者、障害者、多様な個性が生き生きと暮らすことのできる活気溢れる社会をつくろうとは考えない、頑迷で、無策。

 

何をどうしたらいいか分からない政治家は離れてくれ、排外主義者も不要、勉強し直してくれないか、憲法に自衛隊を明記しようがすまいが、そんなこと、日本の安全保障に何の変化も及ぼしやしない。

 

歴史が教えている、女性と子どもが未来の希望なのだ、女性をしあわせにし子どもを心豊かな大人に育て上げることが政治家の仕事ではないのか。

 

子どもは好奇心に駆られて行動し、行き詰まる、コケて膝を擦り剥く、が、それでいい、ひっくり返る怖さと痛さを教訓にして這い上がればいい、失敗と挫折が先を予見できる目を得させてくれる、だから何度でも試み、失敗して、痛さを知る人間になれ、失敗を恐れない人間になれ、日本の未来を担える大きな人物になれ、私たちはそう言って子どもたちを応援してあげなければいけない。

 

安心して子どもを産み育てられる社会、挑戦し失敗してもリセットできる社会、おちこぼれのない社会、知的安全保障を担える社会、そんな信頼できる社会を目指すことが大人になり損なったらしい私たちに課せられた責任なのだ、最早手遅れなどとは言うまい。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

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共感−『ハムレット』1幕2場

 

いつまで続くのか10代のいじめ、子どもたちを教える者の死んだほうが楽と思える過重労働、中高年を襲うストレスと孤立。

 

この事態に誰も関与し ようとしない、助けようとしない、同質性を求める現政権には現場感覚がない、苦しんでいる者に手を差し出す発想そのものがない。

 

この国の病状は深刻で医者や専門家に任せるしかないが、専門家の繰り言評論には弱者と伴走しようとする気概がない、医学部不正入試、無給で働かされる研修医制度、医療現場で苦しむ医者には社会病理を究める余裕などない。

 

処方箋を描けない私はもちろん無能だが、わずかな教育の現場体験と内外での観劇体験があるために、お節介をやきたがる。

 

出雲大社の巫女として念仏踊りを勧進した阿国が京都の四条河原に小屋を建て、十字架を首に巻いて「ややこをどり」、つまりかぶきをどりを興行したのはシェイクスピアの時代、没したのも同じ1616年の頃、徳川家康も1616年の没、日本におけるキリスト教布教活動、おそらく宗教劇上演に阿国が影響を受けて、それがいまの歌舞伎の原型を形づくった、そんな比較の視点を得てシェイクスピアの言葉を東の果てに繋いで面白がり、頭を巡らす。

 

巡らせば、この国の将来が気になり、他人のことに立ち入りたくなってくる、よせばいいのに。

 

ハムレットの 「ああ硬い硬いこの肉体、溶けて、消えてしまえばいい」のくだりを読めば、ハムレットの内面を言葉と表情と仕草を想像させられ、その心情に手を届かすことができた気分になり、ハムレットに共感できたからにはボケーッと生きておれるわけがない、自己客観化が列島のもやもや気分を吹き飛ばしてくれるんじゃないだろうかなどと。

 

真に欲する共感性ある言葉を体に与えないでいると萎えてくる、生きているのが嫌になってくるのではないか、言葉は人を知り、人を愛することの歓びを教えてくれる、聴く、話す、読む、書く行為の力がどんなものかを教えてくれる、言葉を通して人と世界を共有することができる。

 

そうでなければ、心が愛に満たされることはないし、生きて行く道筋を見出すこともできないだろう。

 

考える力、表現する力を身につけ損なったら、本人の不明の何物でもないのだけれども、周囲の大人が誰一人言葉の大切さを教えず、自分もそのことに気づくことがなかったら、こんな悲惨なことがあろうか、言葉を失ったその子は自分を傷つけ、人を傷つけ、社会に牙を向けるんじゃないかだろうか。

 

ハムレットが試されている、不満や恨み辛みが根っこにあって、人とこの世を呪っている。

 

その不明がつくり出す数々の憂鬱なストーリー。

 

人は何にだってなれる、他人になって、役者になって、ハムレットになって、ハムレットのせりふを、言葉を、イメージして、イメージを重ね合わせてハムレットを演じ切ることができるならば、免疫システムの一つくらいは作動してくれるじゃないだろうか。

 

この気づきを英語で言えばパセプションあたりだろうか、すなわち percertion ← perceive 、気づく、知覚する、認識する、完全に受け入れる、per は完全に、ceive は摑むの意。 

 

ハムレットを胸に摑み取ることがでれば、最早ちっとやそっとのことで病院なんかには行かなくなるだろう、薬をもらわない、サプリメントに頼らない、ヒーリングを受けない、健康グッズを買わない、この命は自分の免疫細胞で支えるんだ、意志一つで、そんな一歩を踏み出す勇気も湧いてくるのではないか。

 

立派な優等生的生き方を目指して中世人として悩み、近代人として肉体、精神、言葉の限界を超えようとしたハムレットはいま自分を傷つけたくなるほどに苦悩の淵に。

 

 

王妃 母の願いを無にしないでハムレット

 私たちとここにいて、ウィテンベルクに行かないで。

ハムレット せいぜい留まることにしましょう

 お言葉に従って。

王 それはうれしい、ありがたい、

 デンマークでは私たち同様に振舞うがよい。さあ后よ、

 ハムレットのやさしい同意を得て

 心が晴れた。光栄に応えて

 酒杯を挙げデンマーク王が乾杯するたびに、

 祝砲を雲の上まで轟かせよう、

 王の酒宴の歓声に、天もこだまして、

    地上の雷鳴となって返してくるだろう。行くぞ。退場し

   ハムレットのみ残る。

ハムレット ああこの硬い硬いこの肉体、溶けて、

 崩れて、露になってしまうといい。

 あの永遠の神の掟が

 自殺を禁じていなければ。 ああ神様、神様!

 何て煩わしく、味気なく、陳腐で、無駄なんだ

 この世のいとなみの何もかもが?

 厭だ?ああ厭だ、厭だ、雑草伸び放題の庭が

 種を落とす。汚臭を放って、はびこる

 我が物顔に。こんなことになろうとは。

 亡くなってふた月。いや、ならない。ふた月には、

 立派な王だった、言ってみれば

 ヒペリオンとサチュロスの違い。母上を愛し、

 空を吹き渡る風すら許さなかった

 母上の頬に吹きつけるのを。それがどうだ

 忘れられるか。父上の肩に寄りすがって、

    ますます愛が募るようだった

 満たされるほどに。それがひと月と経たぬうちに? 

 考えたくない。弱き者、その名は女。

 ほんの一月前、あのときの靴が擦り減りもしないうちに、

 父上の亡骸に取りすがって

 ニオベのように、涙に暮れていた。その母上が、母上が。

 (ああ天よ!道理を知らないけだものでも

 もっと長く悲しむだろうに)叔父と結婚した、

 父上の弟と。父上とは似ても似つかない、

 俺とヘラクレスほどに違う男と。ひと月も経たぬうちに? 

 空涙の塩の跡が

 赤く泣きはらした目にまだ残っているのに、

 結婚した。ああ何という慌ただしさ、

 こんなにも早く近親相姦の床に急ぐとは。

 よくない、いいことが起こるはずがない。

 だが胸が裂けても、黙っていなくては。

 

                                                 1幕2場 

 

 

Qu. Let not thy Mother lose her Prayers Hamlet:

 I prythee stay with vs, go not to Wittenberg.

Ham. I shall in all my best

 Obey you Madam.

King. Why 'tis a louing, and a faire Reply,

 Be as our selfe in Denmarke. Madam come,

 This gentle and vnforc'd accord of Hamlet

 Sits smiling to my heart; in grace whereof,

 No iocond health that Denmarke drinkes to day,

 But the great Cannon to the Clowds shall tell,

 And the Kings Rouce, the Heauens shall bruite againe,

 Respeaking earthly Thunder. Come away. Exeunt

  Manet Hamlet.    

Ham. Oh that this too too solid Flesh, would melt,

 Thaw, and resolue it selfe into a Dew:

 Or that the Euerlasting had not fixt

 His Cannon 'gainst Selfe-slaughter. O God, O God!

 How weary, stale, flat, and vnprofitable

 Seemes to me all the vses of this world? 

 Fie on't? Oh fie, fie, 'tis an vnweeded Garden

 That growes to Seed: Things rank, and grosse in Nature

 Possesse it meerely. That it should come to this: 

 But two months dead: Nay, not so much; not two,

 So excellent a King, that was to this

  Hiperion to a Satyre: so louing to my Mother,

 That he might not beteene the windes of heauen

 Visit her face too roughly. Heauen and Earth

 Must I remember: why she would hang on him,

 As if encrease of Appetite had growne

 By what it fed on; and yet within a month?  

 Let me not thinke on't: Frailty, thy name is woman.

 A little Month, or ere those shooes were old,

 With which she followed my poore Fathers body

 Like Niobe, all teares. Why she, euen she. 

  (O Heauen! A beast that wants discourse of Reason

 Would haue mourn'd longer) married with mine Vnkle,

 My Fathers Brother: but no more like my Father,

 Then I to Hercules. Within a Moneth? 

 Ere yet the salt of most vnrighteous Teares

 Had lef the flushing of her gauled eyes,

   She married. O most wicked speed, to post

 With such dexterity to Incestuous sheets:

 It is not, nor it cannot come to good.

 But breake my heart, for I must hold my tongue.

 

     grace = honor    bruite = loudly echo    Manet ( L.)= remains    resolue =

     dissolve    Cannon = law    vses = customs   meerely = entirely   

    Hiperion = the sun god  Satyre = the wine god, Bucchus 

    eteene = permit    ere = before      gauled = inflamed     post = hurry

 

 

まじないとなるような言葉は浮かんでこない、何もかもが絶望的なストーリーにしかならない、この世は関節が外れている、ように見える。

 

けれども、ハムレットの苦悩はすべて自分を中心につくられた客体物に過ぎない、目に見えるものすべてが仮相の世界の何物でもない、幻想に過ぎない、そう、客観的な事物と言えるものはこの世に存在しない、けれども、自意識の強いハムレットは想像を巡らして攻撃的になり、そんな自分に悩み、苦しみ、死んだほうがましだとさえ思っているのです。

 

あやふやな外部客体へのかかわりを断つ涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)は、キリスト教で言う宇宙の本体と自分を同一化させて自己に執着しない生き方を説く無我(空)と同じ、この心の静まった安らぎの境地に入るならば、自ずとホメオスタシス(自律神経、内分泌線、精神のバランス)が機能し、この身を攻撃してくる外敵に反撃して異物を体外に排出してくれます。

 

薬もサプリも処方を間違えば毒にしかならない、ホメオスタシスを狂わす恐るべき副作用。

 

この世に人間精神の限界を超える魔法はない、世直しの処方箋もない、医療的宗教的に伝達されるべき策もない、だから自己治癒力を高めてこの世と折り合うしかない、祈りながら。

 

と言っても、いまある世界をそのまま受け入れることはできない、視野を広げてもっと大きな世界を生きるしかない、そう思って

劇作家はハムレットという共感できる人物を描きいて、予想もしない一手を差し出したのでしょう。

 

多様な声は人と人、人と社会の関係の中で交わされる、けれどもハムレットには心に響く多様な声が備わっています。

 

複数の視点があり、複数のプロットがあり、激しい対話があり、もの静かな独白があり、錯綜してこちら側に伝えられてきます。

 

それら複数の声は決して小さな世界に閉じ籠るものではない、呻吟する自分がいて、不満や恨み辛みを言い立てる自分がいて、しかしそれらを否定する自分がいて、世界が広って行く。

 

人もこの世も変節して止まない主観的存在だが、そんな不分明、曖昧な存在がぜんぶひとつながりに繋がり、自分に繋がり、ハムレットはいつの頃からかそんな自己認識を得るのです。

 

そうと知れば、自分を傷つけ人を傷つける必要はない、この世に復讐するものなどあろうはずもない。

 

多くの矛盾を抱えて死んで行ったハムレットに共感を寄せて共に一度死ぬ、舞台の上で。

 

そして蘇生する、蘇生すれば、そう、ボランティア活動が待っているんじゃないか、誰かのために何かしなければならないことがある、Do for Others、そんな天来の声が聴こえてはこないか。

 

世のため人のために尽くすことが自分に尽くすことになります、それこそが新しい世界に生きる新しい自分の姿。

 

新たな世界は容易に姿を見せてはくれない、だから気づかない、気づこうとしないこの身の不明を恥じ、心を高く押し上げてくれる言葉を摑み取ろう、共感できる言葉を得て、考えやものごとを明確な形に、わが心を励ます楽しいストーリーにしよう、そのために溌剌とした元気な体を取り戻そう。

 

汗をかくことを歓べる体づくりに精出せば硬い肉体も緩むのではないか、朝が来れば歓びに胸を開き、大空を仰ぐことができるのではないか。

 

ハムレットを伴走者として走り出せるのではないか。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

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| - | 18:22 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
権力―『ジュリアス・シーザー』1幕1場

 

権力とは、ただひとつであること、一つの種類だけでほかに混じりもののないことを望み、多様性を否定するものです。

 

他人を支配し服従させようとしてはいけない、寛容と忍耐、譲歩の美徳尊重、異なる意見を聴いて敵だ味方だと峻別してはいけない。

 

日本国憲法はいきり立つことを許さない、民主主義的政治形態は強権を許さない。

 

優しさと心の穏やかさを失って居丈高になると多様性の豊かさが萎む。

 

日本は多様性に富んだ国である、北から南からやって来た人類の多様な遺伝子、春夏秋冬に見せる多様な景観美、生物多様性、そこに生み出される多様な色彩文化、与えられた列島という環境のなかで育まれた多様な日本人の知恵のあれこれ。

 

いまの日本の不幸は、これら多様性の否定、虐待、喪失にあるのではないか。

 

負けられません勝つまではの単一思考、単一的価値の押し付けが蔓延、浸透し、権威となり、服従と追随を生み、主張、自主性、独自性、意外性、異質性、奇想天外、ユニークさは排除される。

 

権力志向の強い者が勢ぞろいして非を理に言い曲げて示威する状況は、嘆かわしい、情けない。

 

ヒーローと少数エリート集団の舞台を想い起こすまでもなく、権力志向はあとを絶たない。

 

共和政下のローマでポンペイ一族を滅ぼして凱旋するシーザーを熱狂的に迎えようとする市民、いや、平民がいて、その群衆化に不安を感じるのが小数エリート派集団の元老院の貴族たちと護民官たちです。

 

彼らは民衆が興奮してシーザーを皇帝に押し上げでもしたら、自分たちの存在が脅かされると危惧するのです。

 

 

マララス 商売は何だ?はっきり言え。

靴直し 商売ですよ旦那、商売と言ったって、

 まともなもんで、いやほんと、いかれたやつの修理屋です。

フレイヴィアス どんな商売をしているんだ?分からず屋め、

 どんな商売だ?

靴直し まあまあ旦那、機嫌を悪くなさらないで。ですが

 いかれているようでしたら旦那、直して差し上げます。

マララス なんだと?俺を修理するってのか、この

 糞生意気な野郎が?

靴直し 手前は旦那、底のほうを直しますんで。

フレイヴィアス 靴直し、なのか?

靴直し その通り、食べておりますんで、錐1本で。

 別に他人様の商売や、女を突っついたりは

 しません。実のところ旦那、手前は靴の外科医なんで。

 命が怪しくなると、手前が直して差し上げる。

 旦那方が子牛のなめしをお召しになるように、

 もうみんな手前の手仕事をあてにしておりまして。

フレイヴィアス だがなぜ店にいないんだ今日は?

 なんで連中を引き連れて街をほっつき歩くんだ?

靴直し 実のところ旦那、靴を減らしてもらって、

 手前の仕事をこさえてもらおうかと。いえね旦那、

 店を休んでシーザー様を見ようと、凱旋をお祝いして。

マララス 何がお祝いだ?

 どんな戦利品を持ってくるというのだ?

 どんな捕虜をローマに連れて来るというのだ、

 戦車の飾りに縛りつけて?

 この唐変木の、石頭の、感覚なしの物にも劣る奴め。

 情知らずの、残酷なローマ人め、

 ポンペイ殿を忘れたのか?

 城壁によじ登り胸壁にかじりついて、

 塔や窓に群がったんじゃないのか?そう、煙突にまで、
 腕に子どもを抱いて、坐って

 一日中、我慢していまかいまかと待って、
 あの偉大なポンペイがローマに凱旋するのを見ようとした。 
 戦車がちらっと見えただけで、

 一斉に歓呼の声をあげたから、

 ティベール川も土手下で身を震わせた、

 お前たちの喚声がこだまして、

 両岸に響いたんじゃなかったのか?

 なのにお前たちは晴着を着てめかし込むのか?

 わざわざこの日を休みにするのか?

 シーザーの前に花を撒くのか、

 ポンペイ一族を滅ぼして凱旋するってのに? 立ち去れ、
 走って家に帰れ、跪いて、

 神々に祈って災いを留めてもらえ
 こんな恩知らずには天罰が下るぞ。

 フレイヴィアス 帰った、帰った、平民、罪滅ぼしに

 仲間の貧乏人をみんな集めろ。

 タイバーの堤に連れて行って、涙を流せ

 水路に、いま一番低い川が

 涙で一番高い岸辺に溢れるまで。

 平民すべて退場。

 

               1幕1場  

 

 

Mur. But what Trade art thou? Answer me directly.

Cob. A Trade Sir, that I hope I may vse, with a safe

 Conscience, which is indeed Sir, a Mender of bad soules.

Fla. What Trade thou knaue? Thou naughty knaue,

 what Trade?

Cobl. Nay I beseech you Sir, be not out with me: yet

 if you be out Sir, I can mend you.

Mur. What mean’st thou by that? Mend mee, thou

 sawcy Fellow?

Cob. Why sir, Cobble you.

Fla. Thou art a Cobler, art thou?

Cob. Truly sir, all that I liue by, is with the Aule: I

 meddle with no Tradesmans matters, nor womens mat-

 ters; but withal I am indeed Sir, a Surgeon to old shooes:

 when they are in great danger, I recouer them. As pro-

 per men as euer trod vpon Neats Leather, haue gone vp-

 on my handy-worke.

Fla. But wherefore art not in thy Shop to day?

 Why do'st thou leade these men about the streets?

Cob. Truly sir, to weare out their shooes, to get my

 selfe into more worke. But indeede sir, we make Holy-

 day to see Cæsar, and to reioyce in his Triumph.

Mur. Wherefore reioyce?

 What Conquest brings he home?

 What Tributaries follow him to Rome,

 To grace in Captiue bonds his Chariot Wheeles?

 You Blockes, you stones, you worse then senslesse things:

 O you hard hearts, you cruell men of Rome,

 Knew you not Pompey many a time and oft?

 Haue you climb'd vp to Walles and Battlements,

 To Towres and Windowes? Yea, to Chimney tops,

 Your Infants in your Armes, and there haue sate

 The liue-long day, with patient expectation,

 To see great Pompey passe the streets of Rome:

 And when you saw his Chariot but appeare,

 Haue you not made an Vniuersall shout,

 That Tyber trembled vnderneath her bankes

 To heare the replication of your sounds,

 Made in her Concaue Shores?

 And do you now put on your best attyre?

 And do you now cull out a Holyday?

 And do you now strew Flowers in his way,

 That comes in Triumph ouer Pompeyes blood?

 Be gone,

 Runne to your houses, fall vpon your knees,

 Pray to the Gods to intermit the plague

 That needs must light on this Ingratitude.

Fla. Go, go, good Countrymen, and for this fault

 Assemble all the poore men of your sort;

 Draw them to Tyber bankes, and weepe your teares

 Into the Channell, till the lowest streame

 Do kisse the most exalted Shores of all.

  Exeunt all the Commoners.

 

   soules  soles(足の裏) とも聴こえる  proper = fine     gone = walked     

    Tributaries = ransome payers     senslesse = inanimate     replication = echo   

    cull out = choose    blood = offspring  plague   神罰と考えられていた

 

 

マララスとフレイヴィアスは平民保護のために平民会から選出された護民官で、平民代表として貴族たちと丁々発止渡り合って、ローマの多様な価値の追求に精出さなければならない立場です。

 

ところが頭にあるのは保身、どうしたら折角得た地位・権力・名誉を保てるかだけで、選出された時点で自分の立場など忘却の彼方に。

 

肩書きが付くと人間はこうなる、豹変する、ちょろっと目立ったくらいで神通力を持つ高慢な天狗に。

 

平民に向かって居丈高に吠え立てるのは、貴族側元老議員の決定を拒否できるほどの権力を持つ人物、明日には皇帝に就くかもしれない人物に対して疑心があるから、自分たちも一端の権力者だと錯覚しているのです。

 

で、ことの成り行きを決したのは彼ら護民官たちではない、暗殺計画の首謀貴族キャシアスでもない、シーザーにとどめの一撃を加えて共和制を維持しようとしたブルータスでもない。

 

そう、個人ではない、分からず屋の、糞生意気な、唐変木の、石頭の、感覚なしの、物にも劣る情知らずの、残酷なローマ市民なのです。

 

と言っても、彼らを煽り立て暴徒化させて利を得たのは、もう一人の悪賢い個人でしたけどね。

 

古代ローマのフォルム(Forum、都市の公共広場)は、四周をバシリカ、元老院、神殿などの公共施設や列柱廊で取り囲まれるオープンスペースで、ここでブルータスがシーザー暗殺の大義を説き、市民がブルータス万歳を叫んだ、直後アントニーが熱弁をふるって市民を扇動、群集と化した市民はシーザーの遺産相続人に豹変して、ブルータスとキャシアスは逆賊の運命を転がり落ちて行くのです。

 

非暴力主義者のガンジーは言いました、自分と異なる意見を聴こうとしない不寛容は敵か味方かを選別する独裁となり、暴力化すると。

 

民主主義という蓑を被った浅はかな多数派の思惑によって物事が決まる状況は危うい、繰り返される人間の権力志向の醜態が人間の頭よりもロボットやコンピュータのほうが信用できると私たちに思わせるのです。

 

人間の未来社会の決定権をロボットやコンピュータに譲っていいのか、機械を権力者にしていいのか。

 

多数派であれ、少数派であれ、ヒーローであれ、機械であれ、疑ってかからなければなりません。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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