シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
政治の虚偽と恋の真実−『お気に召すまま』4幕1場

 

首相の虚偽答弁がきっかけとなって高級官僚の組織防衛意識が忖度を生み、国会答弁に適合させて虚偽答弁、公文書改ざん、隠蔽、交渉記録の廃棄が行われ、大阪地検特捜部は誰やらの主導と結論づけて財務省職員は全員不起訴、政治家は無傷。

 

政、官、司法の嘘の連鎖が続き、自浄能力のなさを露骨にみせつけて幕引き。

 

国民に対する背信行為、国会軽視、誰一人政治責任を明確にしないままに「一点の曇りもない政治風景画」が立派な額縁に収められようとしています。

 

が、アベノウミカクス政権への過剰な忖度の産物の何物でもないことは周知の事実、こんな風景画の鑑賞に耐えられる者がいるのだろうか。

 

人は昔から嘘をついてきました。

 

嘘をでっちあげてまことしやかなスト―リーをつくってきた、歴史家は。

 

嘘を糊塗して恥じないどころか、薄笑いを浮かべて嘘をついてきた、政治家は。

 

恋人は、嘘をつかなかった、真実の思いで溢れていたから。

 

舞台は現在のフランスとベルギーの国境付近のアルデンヌ、そこに自分の故郷のアーデンの森に設定して、恋の真実を嘘偽りなく表現した者がいます。

 

キューピッドの矢に射抜かれたんだ、君が可愛いくてたまらないんだよ、僕を可哀そうだと思ってくないか、気の毒にって思ってくれたらそれだけで苦しみが消える、君と一緒にいたいんだ、話がしたい、黙っていてもいい、一緒に羊の群れを眺めているだけでしあわせなんだ、僕を好きになってくれないかい、欲張りだって?大好きなわけじゃないって?つきあいは我慢してくれるって?用事を頼まれてあげてもいいって?お返しは何も期待しないで頂戴?それで満足しなきゃねって?いいんだよそれで、たまに笑顔をみせてくれれば、それだけで僕は生きていける。

 

シルヴィアスという名の羊飼いが溜息と涙混じりで羊飼い女のフィービを口説いているのです。

 

いかがですか、これ嘘をついていると思いますか?

 

舌足らずで馬鹿みたい、ではあるけれども、真実の思いが溢れてはいないか。

 

オーランドーと男装のロザリンドの場合も同じ、キューピッドの鋭い矢にやられた者は嘘などつけないのです。

 

 

ロザリンド で僕が君のロザリンド

シーリア この人兄さんのことをロザリンドと呼んで、喜んでいる、

 でも本当はもっと色っぽいロザリンドを知っているのよね。

ロザリンド さあ口説いて、口説いて、いま何となく浮き浮きしていて、

 口説かれればいやと言えそうにない、どんなことを言ってくれるの、

 僕が本当に君のロザリンドだとしたら?

オーランドー ものを言う前にキスしているよ。

ロザリンド だめ、最初は言葉を使わなきゃ、言うことがなくなって

 詰まったら、それをきっかけにキスしてもいい、

 慣れた演説家も話がつかえると唾を吐くでしょ、恋人同士が黙っちゃったら

 (神様そういうことのありませんように)それを切り抜ける最上の策がキス。

オーランドー でも拒絶されたら。

ロザリンド そしたらお願いしなきゃ、そこでまた新しい話の種が出てくる。

オーランドー 言葉に詰まる男がいるかな、

 好きな女を前にして?

ロザリンド 僕が君の恋人ならそうしてくれなきゃ、

 でないと純潔が汚され知性が台無しになる。

オーランドー つまり、頭を下げて頼んでもだめってこと?

ロザリンド ふりじゃなくて、心から口説くんだよ。

 僕は君のロザリンドだろ?

オーランドー そう呼ばせてもらうだけで歓び、だって

 あの人のことを話していたいんだから。

ロザリンド なら、その人になり代わって、あなたとは一緒になりたくない。

オーランドー ならば当の本人として、死ぬしかない。

ロザリンド だめ、死ぬんだったら身代わりを。この世は

 開闢以来6千年、そんな長い間に

 自ら進んで死んだ男なんて一人もいない(そう)

 恋のために。トロイラスはギリシア人の棍棒で頭を

 叩き割られたけど、その前に死んでもいいようなことをしていた、

 そのトロイラスが恋人の鑑にされている。リアンダ−だって、

 呑気に長生きしたに違いないヒアロー

 修道院に入っても。蒸し暑い夏の夜がなかったなら、

 (つまりリアンダーはただヘレスポントの海に

 水浴びに行き、脚が引きつって、溺れ死んだだけのこと、

 それを当時の馬鹿な歴史家たちが、

 セストスのヒアローに逢おうとして海を渡り

 溺れ死んだことにした。でもこの種の話はみな嘘、男が死ぬのは

 昔から絶え間ない、みな蛆虫の餌になったけど、

 恋のために命を落とした者は一人もいない。

オーランドー ほんもののロザリンドにはそんな風に思ってもらいたくない、

 僕ならあの人にしかめっ面されただけで死んでしまう。

ロザリンド この手に誓って言うが、蠅一匹死にはしない。でもまあ、

 もっと物分かりのいいロザリンド

 なってあげるよ。好きなように頼んでみな、叶えてあげるから。

オーランドー じゃあ僕を愛してくれロザリンド

ロザリンド ええもちろんよ、金曜土曜の精進の日まで、ええ毎日でも。

オーランドー 一緒になってくれる?

ロザリンド ええ、一度に20人でも。

オーランドー え何て言ったの?

ロザリンド あなた立派な方なんでしょ?

オーランドー そのつもり。

ロザリンド なら、いくら欲しがっても構わまいでしょ

 立派なものなら。さあ妹お願い、司祭の役をやって、

 私たちを結婚させるの。どうぞお手をオーランドー。いいでしょ

 妹?

オーランドー お願いしよう結婚させて。

シーリア どう言ったらいいか分からない。

ロザリンド はじめはこう、汝オーランドーは。

シーリア 分かった。汝オーランドーよ、これなるロザリンドを妻とするや?

オーランドー はい。

ロザリンド はい、でもいつ?

オーランドー いますぐ、妹さんが結婚させてくれ次第。

ロザザリンド ならこう言わなくちゃ、ロザリンドを妻として迎えます。

オーランド― ロザリンドを妻として迎えます。

ロザリンド 介添え人をと言いたいところだけど、

 オーランド―を夫として迎えます。女が

 司祭の言葉を先取りしちゃった、女性の思いは

 行為に優先するのよね。

オーランドー 誰の思いも同じ、恋の思いには翼が生えているから。

ロザリンド では答えて頂戴いつまで離さずにおくつもり、

ロザリンドを自分のものにしたら?

オーランド― 永遠に、永遠の一日だ。

ロザリンド 一日かぎりよ、永遠でなく。だめ、だめオーランドー、男の人は

 4月なの口説くときは、12月になるの結婚すれば。

娘は5月なの娘でいるときは、でも空模様はくるくる変る
人妻になれば。私やきもちを焼くわよ
あなたに、バーバリーの雄鳩が雌鳩に焼くよりひどく、

 喚き立てるわよ雨前のオウムよりやかましく、新しいものを
 次から次に欲しがるわゴリラ以上に、衝動買いするわ、
 小猿以上に。理由もなく泣き出すわ、噴水のダイアナ

 みたいに、それもあなたが陽気なときに。

 笑い出すわハイエナみたいに、それもあなたが

 眠りたいときに。

オーランド― まさかロザリンドがそんな?

ロザリンド 誓ってもいい、あの人のすることは僕と同じだ。

オーランド― ああでもあの人は利口だから。

ロザリンド でなきゃそうするだけの頭もないってことだよ。

賢けりゃ賢いほど、むらっ気なものさ。戸を閉めてみな

女の知恵に、知恵は窓から出て行く。窓を閉めてみな、

鍵穴から抜け出て行く、鍵穴を塞いでみな、吹き出て行く

煙突から煙と一緒に。

 

               4幕1場 

 

 

Ros. And I am your Rosalind.

Cel. It pleases him to call you so: but he hath a Rosa-

 lind of a better leere then you.

Ros. Come, wooe me, wooe mee: for now I am in a

 holy-day humor, and like enough to consent: What

 would you say to me now, and I were your verie, verie

 Rosalind?

Orl. I would kisse before I spoke.

Ros. Nay,you were better speake first, and when you

 were grauel'd, for lacke of matter, you might take oc-

 casion to kisse: verie good Orators when they are out,

 they will spit, and for louers, lacking (God warne vs)

 matter, the cleanliest shift is to kisse.

Orl. How if the kisse be denide?

Ros. Then she puts you to entreatie, and there begins

 new matter.

Orl. Who could be out, being before his beloued

 Mistris?

Ros. Marrie that should you if I were your Mistris,

 or I should thinke my honestie ranker then my wit.

Orl. What, of my suite?

Ros. Not out of your apparrell, and yet out of your suite:

 Am not I your Rosalind?

Orl. I take some ioy to say you are, because I would

 be talking of her.

Ros. Well, in her person, I say I will not haue you.

Orl. Then in mine owne person, I die.

Ros. No faith, die by Attorney: the poore world is

 almost six thousand yeeres old, and in all this time there

 was not anie man died in his owne person (videlicet) in

 a loue cause: Troilous had his braines dash'd out with a

 Grecian club, yet he did what hee could to die before,

 and he is one of the patternes of loue. Leander, he would

 haue liu'd manie a faire yeere though Hero had turn'd

 Nun; if it had not bin for a hot Midsomer-night, for

  (good youth) he went but forth to wash him in the Hel-

 lespont, and being taken with the crampe, was droun'd,

 and the foolish Chronoclers of that age, found it was

 Hero of Cestos. But these are all lies, men haue died

 from time to time, and wormes haue eaten them, but not

 for loue.

Orl. I would not haue my right Rosalind of this mind,

 for I protest her frowne might kill me.

Ros. By this hand, it will not kill a flie: but come,

 now I will be your Rosalind in a more comming-on dis-

 position: and aske me what you will, I will grant it.

Orl. Then loue me Rosalind.

Ros. Yes faith will I, fridaies and saterdaies, and all.

Orl. And wilt thou haue me?

Ros. I, and twentie such.

Orl. What saiest thou?

Ros. Are you not good?

Orl. I hope so.

Rosalind. Why then, can one desire too much of a

 good thing: Come sister, you shall be the Priest, and

 marrie vs: giue me your hand Orlando: What doe you

 say sister?

Orl. Pray thee marrie vs.

Cel. I cannot say the words.

Ros. You must begin, will you Orlando.

Cel. Goe too: wil you Orlando, haue to wife this Rosalind?

Orl. I will.

Ros. I, but when?

Orl. Why now, as fast as she can marrie vs.

Ros. Then you must say, I take thee Rosalind for wife.                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            Orl. I take thee Rosalind for wife.

Ros. I might aske you for your Commission,

 But I doe take thee Orlando for my husband : there's a

 girle goes before the Priest, and certainely a Womans

 thought runs before her actions.

Orl. So do all thoughts, they are wing'd.

Ros. Now tell me how long you would haue her, af-

 ter you haue possest her?

Orl. For euer, and a day.

Ros. Say a day, without the euer: no, no Orlando, men

 are Aprill when they woe, December when they wed:

 Maides are May when they are maides, but the sky chan-

 ges when they are wiues: I will bee more iealous of

 thee, then a Barbary cocke-pidgeon ouer his hen, more

 clamorous then a Parrat against raine, more new-fang-

 led then an ape, more giddy in my desires, then a mon-

 key: I will weepe for nothing, like Diana in the Foun-

 taine, & I wil do that when you are dispos'd to be merry:

 I will laugh like a Hyen, and that when thou art inclin'd

 to sleepe.

Orl. But will my Rosalind doe so?

Ros. By my life, she will doe as I doe.

Orl. O but she is wise.

Ros. Or else shee could not haue the wit to doe this:

 the wiser, the waywarder: make the doores vpon a wo-

 mans wit, and it will out at the casement: shut that, and

 'twill out at the key-hole: stop that, 'twill flie with the

 smoake out at the chimney.

 

   leere = more attractive   grauel'd = at a loss   out = speechless 

     warne = defend  shift = device  videlicet = namely  suite(= courtship)

   ロザリンドはclothing の意味にとっている。 comming-on = agreeable 

     against = in expectation of  new-fangled = in love with novelty    make = close

 

 

ロビンフッドを演じている気分の前公爵は弟の遺産の権利を無視して存在の危機に直面、公爵位を奪われ森に潜む身となってはじめて自分の過ちに気づき、政治家の言葉でなく樹木や小川のせせらぎ、路傍の石の語る言葉に耳を傾けるようになりました。

 

道化タッチストーン(試金石の意)は、この世のすべては明日をも知れぬ定め、恋の定めは明日をも知れぬ狂気にある、万事ほどほどのところで我慢するしかないと言います。 

 

ムッシュ・メランコリーの綽名を持つ宮廷貴族ジェイキスは、人生の役割モデルを赤ん坊、泣き虫小学生、恋人、軍人、裁判官、パンタローネ爺、そして赤ん坊への回帰の七つの段階に掬い取り、この世は波乱万丈の舞台である、人はそれぞれの人生を演じる役者に過ぎないと皮肉な人生観を披露。

 

年老いた羊飼いのコリンは、俺は頭より身体をはたらかす、食うものは自分で稼ぐ、着るものは自分で手に入れる、人の恨みは買わない、人のしあわせは妬まない、他人の歓びを自分の歓びとする、自分の悲しみは我慢する、俺の自慢は羊が草を食い子羊が乳を吸うのを見ることだと。

明るくもあり暗くもある森のなかで、公爵、恋人たち、道化、皮肉屋、羊飼いたちの人生観、価値観、恋愛観が弦楽四重奏風に軽やかに重厚に音を奏でます。

 

森には冷たい風も吹くが天地万物と和して響き合う精気も漲っていて、人生はモノクロームにして多彩、お変わりありまくりの悲喜劇の仮面を被って主筋の複数の恋愛と模擬結婚の風景を描写し、劇の基調はあくまで明るく伸びのびと理想を追いかける展開に。

 

そのなかで、恋人にしかめっ面されると死んでしまいそうだと言葉にならない溜息が漏れる、その思いには翼が生えている。

 

娘は娘でいるときは5月、人妻になればくるくる変る空模様と言うロザリンドの冷静さにも、 言葉にできない思いが溢れてはいないか。

 

この後ロザリンドが言います、きちがい沙汰から生まれたあのめくらの悪戯っ子、目が見えないものだから人の目まで片っ端から狂わせる、私がどんなに深く思っているか、オーランドーの姿を見ずには片時も過ごせないのよと。

 

嘘が嘘を招く社会であっていいはずがない、嘘偽りのない心からの声に耳を傾けたいもの。

 

恋をしましょう、恋をして、浮いた浮いたで暮らしましょ、熱い涙も 流しましょ、昔の人は 言いました、恋はするほど艶が出る〜♪

 

そして、森里川海の沈黙の言葉を聴きましょう。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

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パストラルの異化−『お気に召すまま』2幕5場

 

 

時間と空間には一貫した認識は存在し得ない、アイデンティティーはあっと言う間に不分明、不明確なものに。

 

共通項はない、何を考えても何をやっても然り、集団、組織が大きかろうが、小さかろうが。

 

時間は人によって異なり、空間知覚もそれぞれに異なる、時間と空間は認識の主観的形式であろう。

 

『お気に召すまま』のなかでエイミアンズが素朴で抒情的なバラッドを披露しています。

 

一行は、追放ではない、自由を求めて森へ赴いたのだと。

 

 

 エイミアンズ、ジェイキス、その他登場。

 歌。

 緑の森の木陰に、

 私と一緒に腰を降ろし、

 陽気な歌をうたってくれる人、

 小鳥の囀りに合わせて。

 来て、来て、ここに来て、

 ここには敵はいない、

 ただ冬の寒さがあるだけ。

ジェイキス もっと、もっと、もっとうたってくれ。

エイミアンズ 気が塞ぐだけだよ、ジェイキス殿。

ジェイキス それがありがたい、もっとうたってくれ、

 歌の中身から塞ぎ虫を吸い取るんだ、

 イタチが卵の中身を吸い取るように。もっと、もっとうたってくれ。

エイミアンズ 私の声は嗄れている、気に入るまい。

ジェイキス 気に入るようにしなくていい、

 うたってくれるだけでいい。

 さあ、さあ、次のスタンザ。スタンザって言うんだろ?

エイミアンズ 何とでも、ジェイキス殿。

ジェイキス いや、名前などどうでも、別にそいつに

 貸し借りがある訳じゃない。うたってくれるか?

エイミアンズ リクエストには応えよう、自分が楽しむためじゃなく。

ジェイキス ならば、流儀に従って、礼を

 言おう。お愛想ってやつは出っくわしたようなもの

 道でヒヒ同士が。俺は人に丁寧に礼をされると、

 小銭をやったような気分にさせられる、こいつ乞食みたいに

 へいこらするってな。さあうたってくれ。うたわない者は

 舌を閉じてくれ。

エイミアンズ では、うたいおさめようか。ご一同、食卓の用意を、

 公がこの樹の下で一杯おやりになる。公は1日中君を

 探しておられたぞ。

ジェイキス 1日中逃げていたんだ。

 公の議論好きには付き合えん。

 理屈なら引けをとらないが、俺は

 天に感謝を捧げるだけ、自慢げに吹聴はしない。

 さあ、囀ってくれ、さあ。

 歌。一同。

 野心を捨てて、

 陽射しを浴びて暮らしたい人。

 日々の糧を求めつつ、

 足るを愛し歓ぶ人よ、

 来て、来て、ここに来て、

 ここには敵はいない、

 ただ冬の寒さがあるだけ。

ジェイキス その節回しに一つ乗せてもらおう、

 きのう創作力のない頭で編み出したんだ。

エイミアンズ うたいましょう。

 こうだな。

 何というざまだ、みんな馬鹿になって。

 富を捨て安楽を捨て、

 意地を張っていい気になっている人、

 ダックダーミ、ダックダーミ、ダックダーミ。

 ここに来てみろ、愚か者、

 来れるものなら。

エイミアンズ 何だダックダーミって?

ジェイキス ギリシア語の呪文、馬鹿どもを呼び集めて

 囲みをつくるんだよ。ひと眠りしよう眠れるなら。眠れなけりゃ、

 エジプトで最初に生まれた奴を罵ってやる。

エイミアンズ 公爵を探してくる、

 酒盛りの用意はできた。退場

 

              2幕5場

 

 

 Enter, Amyens, Iaques, & others.

 Song.

 Vnder the greene wood tree,

 who loues to lye with mee,

 And tnrne his merrie Note,

 vnto the sweet Birds throte:

 Come hither, come hither, come hither:

 Heere shall he see no enemie,

 But Winter and rough Weather.

Iaq. More, more, I pre'thee more.

Amy. It will make you melancholly Monsieur Iaques

Iaq. I thanke it: More, I prethee more,

 I can sucke melancholly out of a song,

 As a Weazel suckes egges: More, I pre'thee more.

Amy. My voice is ragged, I know I cannot please

 you.

Iaq. I do not desire you to please me,

 I do desire you to sing:

 Come, more, another stanzo: Cal you'em stanzo's?

Amy. What you wil Monsieur Iaques.

 Iaq. Nay, I care not for their names, they owe mee

 nothing. Wil you sing?

Amy. More at your request, then to please my selfe.

Iaq. Well then, if euer I thanke any man, Ile thanke

 you: but that they cal complement is like th'encounter

 of two dog-Apes. And when a man thankes me hartily,

 me thinkes I haue giuen him a penie, and he renders me

 the beggerly thankes. Come sing; and you that wil not

 hold your tongues.

Amy. Wel, Ile end the song. Sirs, couer the while,

 the Duke wil drinke vnder this tree; he hath bin all this

 day to looke you.

Iaq. And I haue bin all this day to auoid him:

 He is too disputeable for my companie:

 I thinke of as many matters as he, but I giue

 Heauen thankes, and make no boast of them.

 Come, warble, come.

 Song. Altogether heere.

 Who doth ambition shunne,

 and loues to liue i'th Sunne:

 Seeking the food he eates,

 and pleas'd with what he gets:

 Come hither, come hither, come hither,

 Heere shall he see.&c.

Iaq. Ile giue you a verse to this note,

 That I made yesterday in despight of my Inuention.

Amy. And Ile sing it.

 Thus it goes.

 If it do come to passe, that any man turne Asse:

 Leauing his wealth and ease,

 A stubborne will to please,

 Ducdame, ducdame, ducdame:

 Heere shall he see, grosse fooles as he,

 And if he will come to me.

Amy. What's that Ducdame?

Iaq. 'Tis a Greeke inuocation, to call fools into a cir-

 cle. Ile go sleepe if I can: if I cannot, Ile raile against all

 the first borne of Egypt.

Amy. And Ile go seeke the Duke,

 His banket is prepar'd. Exeunt

  tnrne =tune   throte = voice ragged = harsh   disputeable = argumentative

    Greeke 訳が分からないの意 。   all the first borne of Egypt  cf. Exodus12 

  前公爵への恨み節。

 

 

野心を捨てていまあるものに満足しようというパストラル(pastoral、牧童のうたう歌、牧歌、田園詩)的自足を称えるこの作品、何をさておいても牧歌劇でなければなりません。

 

え?馬鹿どもを呼び集めて囲みをつくる?病んだ社会のなかで自己喪失に見舞われた者が逃避、離脱する先が森、その森は何としても牧歌的な楽園であってほしいのだが、追放の身となった事実が消えるわけではない?

 

アーデンの森をアルカディアと思い決めて満足しようとする firstborn son の前公爵の能天気な理屈は我慢ならない、ジェイキスにとって牧歌的空間は日常生活の円周からはずれた異界でしかないのか。

 

理想を追う牧歌の常套はこうして富と安楽を捨てる愚と嘲弄されて異化されてしまいます。

 

シェイクスピアは牧歌という伝統のなかに皮肉屋のジェイキスを投入し、牧歌を批判する牧歌劇という構成にまとめあげたのです。

 

相異なる価値観を衝突させ異化させる手法は、どちらか一方の価値を称揚するのでなく、対立概念の葛藤を経験させて思い込みを攻撃、相対化する、そうであるはずのものがそうでないという、半分半分違っていて、入れ替え可能な互換性ある一つのものにしてしまう。

 

だから、牧歌劇であれ、悲劇であれ、喜劇であれ、問題劇であれ、どうぞ「お気に召すままに」ということなのか。

 

いま、いや昔も、時間と空間は歪み、揺れ続けています。

 

私たちは緑の空間に身を置いてもなお、ステレオタイプ化するおのれを壊してアイデンティティーに対する新しい感覚を取り戻さなければならないようです。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

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森里川海−『お気に召すまま』3幕2場 

 

先日講演をきいてきました。

 

森里川海は一続きに繋がっている、一続きに繋がっている命あるところにはいいことがいっぱい!という話でした。

 

グローブ座がオープンした1599年に『ジュリアス・シーザー』と交互に柿落とし公演された『お気に召すまま』の舞台は故郷ストラットフォードのアーデンの森です。

 

弟に領土を奪われて追放された伯爵がロビン・フッドになるというお話ですが、森に潜む前公爵を中心に、男装のロザリンドが、いとこのシーリアが、羊飼いが、道化が、それぞれの恋を演じ分けます。

 

登場人物はみな疲れ切った足取りで森に赴くのですが、身を切る風や飢えはあってもいいこともいっぱいあるおかげでみんながしあわせになるのです。

 

次のやり取りは疑心や失意が癒される前のドタバタ、ギクシャクの場面。

 

 

シーリア いまの詩聴いていた?

ロザリンド ええ、すっかり、いえそれ以上、だって

 韻律リツリツで詩が耐え切れないくらいなんですもの。

シーリア 耐え切れたのよね。起立リツリツして聴いていたんなら。

ロザリンド ええ、でも足が不自由だと、耐え切れない

詩がなけりゃ、だから不自由に耐えて詩を聴いていたの。

シーリア 不思議だと思わない、あなたの名前が

 ぶらさがっていたり、あちこちの樹に刻まれたりしていて?

ロザリンド もうほんとにびっくり、

 あなたが来るまで。ほらこれ見て棕櫚の樹にかかって

 いたの。こんな風にうたわれたことってあるかしらピタゴラス以来

 あの頃なら私アイルランドの鼠よね、よくは覚えていないけど。

シーリア どう思う、誰がこんなことを?

ロザリンド 男の人かしら?

シーリア 前にあなたがつけていた鎖を首にかけている人。

 顔色が変わった?

ロザリンド 誰のことよ?

シーリア ああ神様、神様、何て難しいんでしょうお友達が

 仲良しになれないなんて。でも山と山が地震で

 動いて、一つになるってこともありよね。

ロザリンド そんな、いったい誰なの?

シーリア ほんとに分からないの?

ロザリンド もちろんよ、お願い、教えてったら、

 誰なのよ。

シーリア ああびっくり、しゃっくり、こんな驚いたことって

 ない、それでもまだびっくり足りない、これから先は

 もう呆れてものが言えません。

ロザリンド いらいらする、私が男の身なりを

 しているからって、心の中までダブレットとタイツ仕立てだと

 思っているの?ちょっとでも手間とらせたら、私もう南洋の

 探検旅行家よ。お願いだから、誰なのか早く教えて、

 いま直ぐ。あなたドモリになれるのね、

 隠された男の人の名前を飛び出させられる、

 細口の瓶からワインがドバッと流れ出るみたいに、どちらかよ

 一度にドバッか、それとも詰まって出て来ないか。さあお願い

 口のコルク栓を抜いて、知ってることを飲ませて頂戴。

シーリア そうやってお腹に男の人を一人飲み込むのね。

ロザリンド その人神様がおつくりになったんでしょ?どんな感じ?

 頭に帽子が似合う?それとも顎髭が似合う?

シーリア いえ、お髭はほんの少し。

ロザリンド 神様がもっと生やしてくださるわ、その人が感謝の気持ち

 さえ持っていれば。髭は伸びるに任せて、ぐずぐずしてないで

 どちら様の顎なのかすぐ教えて。

シ−リア あのオーランドー、力士の

 踵と、あなたの心臓を、両方ともあっという間にひっくり返した人。

ロザリンド よしてよ、冷やかしたりして。真面目に

 つましい女らしく話して。

シーリア 嘘は言わないわよ(いとこさん)あの人なの。

ロザリンド オーランドー

シーリア オーランドー

ロザリンド まあ大変、どうしましょうこのダブレットと

 タイツ?あの人何をしていたの逢った時?何を言って

 いた?どんな顔だった?どんな身なりだった?ここで

 何をしているの?私のこと訊かなかった?どこにいるの?

 どんな風に別かれたの?今度いつ

 逢うの?答えて頂戴ひと言で。

シ−リア まずはガルガンチュアの口を借りてきてもらわなきゃね。

 こんな人間の口ではたくさん過ぎるひと言よ、

 一つひとつにハイだのイイエだのと答え分けるだけでも、難しい  

 教義問答に答えるより。

ロザリンド あの人は知っているの私がこの森にいて、

 男の身なりをしていることを?お元気そう、力較べをなさった日

 みたいに?

シーリア 塵を数えるほうが易しいわね

 恋人の問いに答えるのに比べたら、あの人を見つけた

 話を、毒味して味付けなさいな。あの人は

 樹の下にいたの落ちた団栗みたいに。

ロザリンド ジョーブの木って言われるだけあって、樫の木は

 木の実を落としてくれるのよね。

シーリア どうぞご清聴を、お嬢様。

ロザリンド 分かったわ。

シーリア そこにあの人は疲れてのびていたわ傷ついた

 騎士みたいに。

ロザリンド そんな姿を見るのは憐れよね、

 背中は地面でないと。

シーリア 黙れ、その舌、お願いだから。よくもまあ

 飛び跳ねる舌ね。あの人狩人のような身なりだった。

ロザリンド まあ不吉な、私の心臓を射抜こうってのね。

シーリア うたいたいから茶々入れないで、

 調子狂っちゃったじゃない。

ロザリンド 私が女だということを知らないの、心に思ったことは、

 口に出さずにおれないの。ねえ、教えて。

 オーランドーとジェイキス登場。

シーリア 手が付けられない、シッ!静かに、あの人じゃない?

ロザリンド あの方だわ、隠れて、見ていましょう。

ジェイキス いやあどうも、もっとも正直言って

 一人にしておいてもらったほうがよかった。

オーランドー こちらこそ。でもまあしきたり通りに

 お礼を申し上げよう、お付き合いいただきまして。

ジェイキス では失礼、できるだけ逢わないようにいずれまた。

オーランドー どうか赤の他人でおれますように。

ジェイキス これ以上樹を痛めませんように

 木の皮に恋の歌など刻んで。

オーランドー どうか私の詩を台無しにしませんように

 下手な読み方をして。             

 

                 3幕2場

 

 

Cel. Didst thou heare these verses?

Ros. O yes, I heard them all, and more too, for some

 of them had in them more feete then the Verses would

 beare.

Cel. That's no matter: the feet might beare y^e verses.

Ros. I, but the feet were lame, and could not beare

 themselues without the verse, and therefore stood lame-ly in the verse.

Cel. But didst thou heare without wondering, how

 thy name should be hang'd and carued vpon these trees?

Ros. I was seuen of the nine daies out of the wonder,

 before you came: for looke heere what I found on a

 Palme tree; I was neuer so berimd since Pythagoras time

 that I was an Irish Rat, which I can hardly remember.

Cel. Tro you, who hath done this?

Ros. Is it a man?

Cel. And a chaine that you once wore about his neck:

 change you colour?

Ros. I pre'thee who?

Cel. O Lord, Lord, it is a hard matter for friends to

 meete; but Mountaines may bee remoou'd with Earth-

 quakes, and so encounter.

Ros. Nay, but who is it?

Cel. Is it possible?

Ros. Nay, I pre'thee now, with most petitionary ve-

 hemence, tell me who it is.

Cel. O wonderfull, wonderfull, and most wonderfull

 wonderfull, and yet againe wonderful, and after that out

Ros. Good my complection, dost thou think though

 I am caparison'd like a man, I haue a doublet and hose in

 my disposition? One inch of delay more, is a South-sea

  of discouerie. I pre'thee tell me, who is it quickely, and

 speake apace: I would thou couldst stammer, that thou

 might'st powre this conceal'd man out of thy mouth, as

 Wine comes out of a narrow-mouth'd bottle: either too

 much at once, or none at all. I pre'thee take the Corke

 out of thy mouth, that I may drinke thy tydings.

Cel. So you may put a man in your belly.

Ros. Is he of Gods making? What manner of man?

 Is his head worth a hat? Or his chin worth a beard?

Cel. Nay, he hath but a little beard.

Ros. Why God will send more, if the man will bee

 thankful: let me stay the growth of his beard, if thou

 delay me not the knowledge of his chin.

Cel. It is yong Orlando, that tript vp the Wrastlers

 heeles, and your heart, both in an instant.

Ros. Nay, but the diuell take mocking: speake sadde

 brow, and true maid.

Cel. I'faith (Coz) tis he.

Ros. Orlando?

Cel. Orlando.

Ros. Alas the day, what shall I do with my doublet &

 hose? What did he when thou saw'st him? What sayde

 he? How look'd he? Wherein went he? What makes hee

 heere? Did he aske for me? Where remaines he ? How

 parted he with thee ? And when shalt thou see him a-

 gaine? Answer me in one vvord.

Cel. You must borrow me Gargantuas mouth first: 

 'tis a Word too great for any mouth of this Ages size, to

 say I and no, to these particulars, is more then to answer

 in a Catechisme.

Ros. But doth he know that I am in this Forrest, and

 in mans apparrell? Looks he as freshly, as he did the day

 he Wrastled?

Cel. It is as easie to count Atomies as to resolue the 

 propositions of a Louer: but take a taste of my finding

 him, and rellish it with good obseruance. I found him

 vnder a tree like a drop'd Acorne.

Ros. It may vvel be cal'd Ioues tree, when it droppes

 forth fruite.

Cel. Giue me audience, good Madam.

Ros. Proceed.

Cel. There lay hee stretch'd along like a Wounded

 knight.

Ros. Though it be pittie to see such a sight, it vvell

 becomes the ground.

Cel. Cry holla, to the tongue, I prethee: it curuettes

 vnseasonably. He was furnish'd like a Hunter.

Ros. O ominous, he comes to kill my Hart.

Cel. I would sing my song without a burthen, thou

 bring'st me out of tune.

Ros. Do you not know I am a woman, when I thinke,

 I must speake: sweet, say on.

 Enter Orlando & Iaques.

Cel. You bring me out. Soft, comes he not heere?

Ros. 'Tis he, slinke by, and note him.

Iaq I thanke you for your company, but good faith

 I had as liefe haue beene my selfe alone.

Orl. And so had I: but yet for fashion sake

 I thanke you too, for your societie.

Iaq. God buy you, let's meet as little as we can.

Orl. I do desire we may be better strangers.

Iaq. I pray you marre no more trees vvith Writing

 Loue-songs in their barkes.

Orl. I pray you marre no moe of my verses with rea-

 ding them ill-fauouredly.

 

    Irish Rat アイルランドの詩人は rats と death を押韻できると信じられていた。  

  feete = metrical units   caparison'd = dressed   apace = at once

 Coz =⦅略式⦆いとこ   Gargantuas  = A giant in French folklore and

    From the writings of Rabelais   Atomies = Specks of dust   holla = hold

  curuettes = leaps about      furnish'd = dressed     burthen = reflain    

   as liefe  = as willingly 

 

 

ジェイキスが世間の間違いの最大なるものは恋をしているということだと冷やかす、オーランドーがその間違いだけはあなたの最高の美徳とでも取り換えたくないとやり返す、あげくに恋のかたまりさんのお相手はご免、ふさぎ虫さんとお別れできて何よりの喜びとケチをつけ合って別れます、こんなお別れのご挨拶、きいたことがありません。

 

シェイクスピアはよく森や海を場面設定しますが、ここでは女同士のロマンチックな恋の話ばかりでなく、男同士の不協和音の挨拶なども入れて、固定化した人間行動を壊し、溶かし、流動化させようと目論んでいるのです、あたかも森が川となり、海と一つにつながるように。

 

このシーンの後ロザリンドはギャ二ミードと称してオーランドーの恋の病いの治癒者、指南役ともなって、自分をロザリンドと呼ばせて口説かせ、ギャ二ミード役と本来の自分の間を往来しながら恋に憧れ、恋を罵り、恋心を隠しながらも本心を覗かせ、己と恋人の感情を試しつつ、森の持つ豊かな生命力を体現するかのように大きく変化成長して行くのです。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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