シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
ミドルイングリッシュ 

 

英語は綴字が短かったり長かったり、綴字と発音の間にずれがあったり、アクセントの位置があっちこっち移動したりして、ちょっと変と思われる向きが多い。

 

シェイクスピアの前のチョーサー(Geoffrey Chaucer、1343?-1400)の英語を覗くと、モダーンイングリッシュとしてのシェイクスピアの英語の成り立ちが鮮明に。

 

興味深く原文朗読に挑戦していただくためにも英語史をおさらいしておきましょう。

 

ウェールズ人の祖先であるブリトン人(ケルト人、文字を持たなかった)居住していたブリテン島はフランスからも北欧からも簡単にアクセスできるため、多くの種族や民族が押し寄せてきて島の支配を繰り返しました。

 

そのため周辺各地域の言語を呑み込む形で島の土俗語は繁殖し続けました。

 

紀元前55年にはシーザー率いるローマ軍がブリテン島に上陸、以来、古代ローマ帝国がブリテン島を支配し、紀元後の50年にはテムズ川の河口に城壁を巡らしたロンディニウム(現在のロンドン)が建設され、ラテン語が使われるようになりました。

 

ローマ帝国による支配が続きましたが、やがて北ヨーロッパに住むゲルマン民族の侵攻によってローマは衰退し、410年にローマ軍はブリテン島から撤退します。

 

代わってデンマークからデーン人が、スカンジナビアからヴァイキングがやってきて、攻防がありました。

 

ゲルマン民族の一部であるアングル人とサクソン人(Anglo-Saxon)が流入してきてからはゲルマン系の言語が話されるようになりました。

 

11世紀頃まで使われていた土俗語はオールドイングリッシュ(古英語、アングロ・サクソン語)と称されていて、ドイツ語やスウェーデン語に近いものです。

 

古英語で書かれた最も古い文献が『ベーオウルフ』(Beowulf、作者不詳の叙事詩、700年〜800年頃)で、make, do, have といった短い基本的な語彙が多く、アクセントはほぼ語頭にありました。

 

中世の半ば、1066年、ヘイスティングズの戦いでイングランド王ハロルドを破ったフランスのノルマンディー公ギヨーム2世がウイリアム1世を名乗って英国王として即位すると、古英語が一気に大きく変容します。

 

ノルマンディー地方のバイユーにあるバイユー・タペストリー(横70メートル、高さ0.5メートルのリネン製の布に毛糸の刺繍が施された長大な絵巻物で、軍服や軍船、甲冑に身を固め、斧や長槍を構えた兵士の戦闘模様が58場面で構成、人物623人、軍馬202頭、猟犬55頭、樹木49本、荷車1両、船41艘、鳥獣などの生物500匹以上が描かれ、各場面にラテン語の説明文があります。

 

ノルマン王朝(1066-1154 )時代に、イングランドはラテン系のフランスと政治的文化的に強く関係するようになります。

 

ノルマン人貴族はフランス語、教会関係者はラテン語、下層の庶民階級はフランス語を受け入れながらゲルマン系のイングリッシュを話すという三層構造となって、三つの異なる言語が使われて300年が経過します。

 

チョーサーの『カンタベリー物語』(The Canterbury tales1387頃-1400に執筆)は、教会用語のラテン語もノルマン人貴族のフランス語も使わず、世俗階級の使う土俗語を使って書いたという点で画期的、実質的イングリッシュが使われた最初の作品ということになります。

 

『カンタベリー物語』の総序(General Prologue)の『出だしの部分を引用しますので、綴り字、語彙、語順にご注目いただき、現代語訳と私の日本語訳を突き合わせてみてください。

 

 

 Whan that Aprille with hise shoures soote
 (When April with its sweet showers)


 The droghte of March hath perced to the roote
 (Has pierced the drought of March to the root

 And bathed euery veyne in swich lycour
  lycour→ licour (liquid)

 (And bathed every vein in such liquid)

 
 Of which vertu engendred is the flour
  vertu→ virture (strength) 

 (From which strength the flower is engendered)
 
 Whan Zephirus eek with his sweete breeth
 (When Zephirus also with his sweet breath

 Inspired hath in euery holt and heeth
 (Has breathed upon in every woodland and heath

 The tendre croppes and the yonge sonne
 (The tender shoots, and the young sun

 Hath in the Ram his half cours yronne

  Ram 牡羊座(北天の星座)

 (Has run his half-course in the Ram)
 

 And smale fowles maken melodye
  (And small birds make melody

 That slepen al the nyght with open eye
 (That sleep all night with open eyes

 So priketh hem nature in hir corages

  hem→ them、hir→ their、corages→ courage (heart)
  (So nature pricks them in their hearts
 
 Thanne longen folk to goon on pilgrimages...
 (Then long folk to go on pilgrimages...)

 

  春になると夕立がしめやかに降ってきて
 3月の日照りを潤して根元まで沁み込み

 植物という植物がお湿りを受けて

 その力で花が顔を出す。

 微風が香しい息を吐き

 すべての山と野に吹き渡り

 柔らかい新芽に若やいだ太陽が

 牡羊座を半分巡る

 小鳥たちは囀り続ける

 夜も眠らずに目を開けて

 それほどに自然は小鳥たちの心を沸き立たせる

 すると人びとは巡礼の旅を思い立つのだ…

 

 

ゲルマン系の古英語とラテン系のフランス語方言が組み合わさった言語、モダーンイングリッシュに近い。

 

チョーサーの頃はゲルマン系のほとんどの階級の人びとがこのミドルイングリッシュ(中英語)を使っていたのです。 

 

と言うのも、フランスとの百年戦争時(1337〜1453年)のさ中、イングランドは英語をフランス語と区別して、公用語をフランス語から英語に改めたからです。  

 

加えて、15世紀の初めに公式文書としての規格(Chancery Standard)が必要となって、その際の基準となったのがロンドンとイーストミッドランズの方言でした。

 

この言語規範が政府のすべての部門に採用されて、公式文書のすべてがチョーサー風英語で書かれるようになっていたのです。

 

教会はラテン語で文書を書き、法的な文書もラテン語によって書かれてはいましたけれども。

 

15世紀中頃にグーテンベルクが活版印刷の技術を向上させたことで公式英語の普及に大いに貢献することになりましたが、綴り字法はまだ確立されてはいませんでした。

 

ミドルイングリッシュはこうしてシェイクスピアのモダーンイングリッシュの言語体系へと向かい、北の端っこに浮かぶ小さな島で話されていた土俗語がいまや世界でもっとも大きな言語圏を形成するに至ったのです。

 

シェイクスピアの英語はミドルイングリッシュでなく紛れもないモダーンイングリッシュ、英国の子どもたちはシェイクスピアから母国語を学び始めます。

 

 

シェイクスピア朗読教室

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自惚れーソネット62 

 

梅雨明けて猛暑続き、汗をかいたほうがいいと自惚れて歩き回っていましたが、うなぎのぼりに危険な熱さに、いまは隠忍自重、朝から昼寝しています。

 

自惚れは self love とか self-conceit 、自己陶酔は narcissism と言いますね。

 

先の参院選はこれらの単語が勢ぞろいして組織戦の様相を呈しました。

 

参院の意義はチェック機能にある、本来は各界、各層を代表する市民が推薦で選ばれる良識の府であるべきでしょう。

 

れいわ新選組が組織に頼らず当事者を主役に押し出したのはよかった、が、あきらめと飽きの変動なしの結果に。

 

でありながら、政権与党は国民の信任を得た、改憲論議をと総括、議会制民主主義が死にかかっているというのに、自分に都合のいいように解釈して自惚れている場合ではありませんね。

 

内政も外交も自惚れた結果、後退に継ぐ後退、3本の矢も、社会保障も、地球儀外交も、グチャグチャにとっ散らかしてしまって、どう始末をつけるのでしょうか。

 

シェイクスピアのソネットに Sin of self-love  というのがあります。

 

 

 自惚れという罪が私の目に取り付いている、

 魂に、この体のすみずみにまで。

 この罪は誰も取り除けない、

   私の心に深く根ざしているから。
 思うに私のこの顔は誰よりも端正で、
 姿は誰よりも優美で、並び立つ者はいない、

だれ一人として持ち合わせていない、

 私にまさる価値を。

 ところが鏡に映った自分を見ると
 黒ずみ老いさらばえた顔があり、

 自惚れとは真逆だと思わざるを得ない
 自分は、自惚れは罪深い、

   君なんだよ(自惚れて)自分を称えているのは
   君の美しさで自分の老いの身を飾っているんだ。

 

               ソネット62

 

 

 Sinne of selfe-loue possesseth al mine eie,

 And all my soule, and al my euery part;

 And for this sinne there is no remedie,

 It is so grounded inward in my heart.

Me thinkes no face so gratious is as mine,

 No shape so true, no truth of such account,

 And for my selfe mine owne worth do define,

 As I all other in all worths surmount.

 But when my glasse shewes me my selfe indeed

 Beated and chopt with tand antiquitie,

 Mine owne selfe loue quite contrary I read

 Selfe, so selfe louing were iniquity,

   T'is thee(my selfe)that for my selfe I praise,

   Painting my age with beauty of thy daies.
 

     gratious = beautiful  true  端正な   truth 容貌と心の誠実の両義  

     of such account こんなにも評価されるべきものの意  As = As if    

    surmount = surpass

 

 

自惚れが心に深く根ざしていると自嘲的に語る詩人、自分が自惚れていたのはほかならぬ君(thee)と若さを共有していると錯覚していたからだと。

 

この thee は誰か、何か、多義的ですね、いかにもシェイクスピアらしい。

 

自分の愚かさに気づかない底知れぬ自惚れの罪。

 

五輪は世界を映す鏡、人種、性別、言語、宗教、障害の有無の違いを肯定的に受け入れて認め合うのが人類の進歩、世界の平和に繋がる、そんな多様性を肯定する社会を目指す方向となっています。

 

その通りなんでしょうが、いまの私たちにはそう考えるだけの心の余裕がない。

 

仕事を持つ女性は、忙しすぎてストレスフルに、職務と母親業、妻業の間で揺れ、老夫母の介護問題を抱えるが夫の無理解があって葛藤が多い。

 

女性も、子どもも、後期高齢者も、心豊かに生き甲斐をもって生きることのできる政策を構想してもらいたいが、政治家は経済力、軍事力第一に国を守ることに忙しくて、そんなことを考える余裕はない、ないない尽くし。

 

子どもたちは英語が話せない、日本語が話せない外国にルーツを持つ子どもに必要な支援は届かない、多様な文化を重視する異種組み合わせ授業は行われない、ドロップアウトした子どもが自立できる学びの場はない、学校歴が気になり多様な価値観に基づく個別最適化教育はできない、同一平等主義を引きずる学校で子どもたちは主体的、対話的、体験的に学習して未来の創り手としての資質や能力を伸ばすことができない。

 

日本ではいま多くの外国人が働いていて、仕事も外国語まじリ日本語でやっていますね、この現実を踏まえて彼らと伴奏すればいいんですよ、自動翻訳機を使って日本語混じり外国語で話す能力を身につければいい、要はお喋りを愉しむ心を育ててあげることなんですからね。

 

ところが現実は酷過ぎて、そんなお喋りを愉しむ時間がない、分刻みで子どもたちは動き回らなければならない、そう、勝つために。

 

極端な少子化と超高齢化が進んで他殺と自死の常態化する社会になり、税金の30%強が高齢者対象の年金・医療・介護の社会保障費に使われ、国防への安全保障費は目の玉が飛び出るほどに増強され、その分忙しく働いている者への手当はない、働き方改革は進まない、若者の教育費や学術振興費に使われる割合は狭められている。

 

潤沢な資金と取り巻き連中の支えによって虚飾の上塗りを繰り返す巨大組織は、恥じらいもなく上っ面の自惚れの罪を犯し続け、この6年あまり問題の本質を覆い隠す政治偽装は極まり、文書改ざん、記録なし、記憶なし、統計改ざん、調査無し、医療・介護・福祉・教育の偽装、詐欺組織の蔓延、行政からマスコミに至るまで長期政権への忖度があって日本の報道自由度は下がり、今回の参院選の史上2番目に低い投票率を招いてしまった。

 

責任を取らない政治家諸君よ、一粒の良心があれば、悔い改めて、中国、ロシア、アメリカ、朝鮮半島との関係を正し、空母や戦闘機などを整備しなくてもいい社会を、女性や子どもがほっと一息つける国づくりに税金を使ってくれないか。

 

ついでに後期高齢者が生き甲斐を持って生きることのできる社会の仕組みづくりを考えてくれ。

 

いや、国が激しく分断されたいま、一市民としてやるしかないか。

 

高齢者よ、一歩外に出て、医者や薬に頼らない体力づくりに精出そう。

 

政治は暮らしの根付く場にあり。

 

向き合うのは地域であって、国ではない。

 

人の息遣いを感じられるところでボランティア活動に楽しく面白くかかわっていこうではないか。

 

虚飾で身を飾ることに汲々していると、鏡に映る黒ずんだ醜い顔を目にすることになる。

 

 

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| - | 09:41 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
クレオパトラのワインー『アントニーとクレオパトラ』5幕2場

 

プラごみと鉛の処理がうまくいっていないんですね。

 

ベートーベンが耳が聴こえなくなったのは鉛が原因で、毛髪から通常の百倍近い鉛が検出されたそうです。

 

原因はワインに用いられた酢酸鉛で、当時安物のワインの醸造過程で甘味料として加えられていたのです。

 

甘いワインをがぶ飲みしていたベートーベンは、いつもお腹の具合いが悪く、最後は肝硬変になって、死に至ったらしい。

 

古代ローマ時代には水道管に鉛管を使い、ワイン保存に鉛を添加していたために、深刻な鉛中毒が起こって、亡国の原因になったと言われています。

 

いまゴミを徹底リサイクルしようとしても、古い家電などに鉛が入っていて、うまくリ処理できないのです、飛び散ってしまって。

 

私は信州塩尻産の井筒ワインをチビチビ舐めていますが、こちらは大丈夫、たぶん。

 

いままでプラごみは中国に搬送、古い電化製品は廃棄されて、燃えないゴミとして、あっちこっちに埋め立てられていたのです。

 

そこに雨が降る、工場の排煙(鉛が含まれている)で汚染された酸性雨が降る、雨は埋め立て地の鉛を溶かして土を汚染する、汚染水は地下水に沁み込み、汚染水は降り続く雨によって川と海に流れ込み、そこに棲む魚に鉛が蓄積する、こうして土壌から始まった汚染は地球の生態系を壊し続けてきたのです。

 

恐ろしいのはその蓄積性で、人体に吸収された鉛のほとんどは骨に沈着して、容易に排出されず、中毒症状を起こして、疲労感、不眠、便秘、神経過敏、頭痛、精神異常が起こり、鉛はブーメランのように回転して私たちの心身を直撃してくるんですね。

 

大気汚染を怖れてではないが、最近は上野にも、渋谷にも、日比谷にも、紀尾井町にも、人の集まるところにはあまり出かけません。

 

でもね、テレビのコンサート番組は別、先日、2019年4月公演のN響定期演奏会をEテレで観ました。

 

指揮はヤクブ・フルシャ、ソプラノ独唱がヴェロニク・ジャンス、曲目はR.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」、ベルリオーズの「クレオパトラの死」、そしてヤナーチェクのシンフォニエッタ。

 

そのなかで「クレオパトラの死」がドラマティックでよかった、パチパチ。

 

クレオパトラの独白という形で、長身で、細身、赤いロングドレス姿のジャンスさんのソプラノの独唱が際立った。

 

クレオパトラには毒蛇に身を嚙ませて死んだというエピソードが残っていて、若き日のベルリオーズがこの部分を曲にしたのです。

 

シェイクスピアにも『アントニーとクレオパトラ』があり、この場を想像力豊かに次のように表現しています。

 

 

クレオパトラ 礼服をとって、王冠を被らせて、私はもう

 エジプトの葡萄の汁でこの唇を潤すことはない。

 さ、早く、アイラス。早く。聴こえるのよ

 アントニーが呼んでいるの。身を起こして

 私の立派な行為を褒めているわ。笑っている

 シーザーの幸運を、神々が与えてくださったのよね

 怒った後は赦してあげなさいって。あなた、いま行きますよ。

 さあ夫の名にかけて、勇気を出して私の称号を証明しなきゃ。

 私はいま火よ、空気よ。私の他の元素は

 卑しいこの世に遺して行きます。どう、すんだ?

 さあ、私の唇からお別れのキスを受け取ってね。

 私の唇に蛇の毒がついていたの?倒れちゃって?

 お前と、命がこんなにやさしく別れられるんなら、

 死神に殺されるのは恋人に抓られるようなもの、

 ちょっと痛いけど、いいわよね。まだ倒れているの?

 こんな風に死ねるんなら、世間に教えてあげなきゃ、

 死なんてさよならを言う値打ちもないわよって。

 

                5幕2場

 

 

Cleo. Giue me my Robe, put on my Crowne, I haue

 The iuyce of Egypts Grape shall moyst this lip.

 Yare, yare, good Iras; qui>Anthony call: I see him rowse himselfe

 To praise my Noble Act. I heare him mock

 The lucke of Caesar, which the Gods giue men

 To excuse their after wrath. Husband, I come:

 Now to that name, my Courage proue my Title.

 I am Fire, and Ayre; my other Elements

 I giue to baser life. So, haue you done?

 Come then, and take the last warmth of my Lippes.

 Haue I the Aspicke in my lippes? Dost fall?

 If thou, and Nature can so gently part,

 The stroke of death is as a Louers pinch,

 Which hurts, and is desir'd. Dost thou lye still?

 If thus thou vanishest, thou tell'st the world,

 It is not worth leaue-taking.

 

  Yare = Briskly    qui>  =  quick       Aspicke = Asp  

 

 

私はもうエジプトの葡萄の汁でこの唇を潤すことはない、女王はベートーベンのようにワインをがぶ飲みしていたのか。

 

ここに出てくるシーザーはジュリアスではなくて執政官のオクテヴィアス・シーザー、クレオパトラはもう一匹の毒蛇も胸にあてがい夢を見るようにこと切れるのです。

 

ジャンスは20分間フランス語で母音と子音を明瞭にうたい続けて絶望と諦観を、弦、管、打の音が静まるなかで敗北と栄光を語り、かつての日々を思い出します、ナイル、ファラオ、イシス、オシリス、ピラミッドという声を濃く薄く残して、そしてさいご、声にならない声でうたい続けて消えて行ったのです。

 

クレオパトラのワインという伝説があって、ティエポロが『クレオパトラの饗宴』(1744)にワインに真珠を溶かして飲むクレオパトラを描いています。

 

ワインが酸化してワイン・ビネガー(酢)になると、真珠が酢酸に反応して溶け、ワインのなかの酢酸が消えて炭酸ガスと水になりアルコール分が残る、つまり、クレオパトラは当時の酸化するワインを再生させて飲んでいた、こういうことになるんですね。

 

真珠はほんとにワインに溶けたのか、お腹を壊すことはなかったのか、ちょっと気になりますね。

 

もっと気になるのは今回の参院選、不穏な政治・社会情勢のなかで国のかたちを変えるような国民的議論がまたまたはぐらかされようとしている。

 

候補者に土や水を問う意識がない、社会保障と安全保障の真のあり方を問う人格教養がない、閉ざされつつある人間の未来を憂う顔がない。

 

人間の劣化が際立ち、この世が醜い卑しいものになってきました。

 

 

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