シェイクスピア朗読

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よきものふるきほどよし―『ぺリクリーズ』1幕1場

 

 

積もった雪が溶け出す季節に起こった不可解なモリトモ問題、日本の首相の妻が公教育を否定して国家主義的復古思想を捏ね上げてみせたのです。

 

保守政治家はこの凍った氷を誰一人として溶かそうとしない、批判しない。

 

『カンタベリー物語』(The Canterbery Tales、韻文と散文から成る24編の物語集、1387〜1400年に執筆、未完)の著者チョーサーの友人ガワー(John Gower、1330?〜1403)は、一方に傾く社会を非難する寓意的で教訓的な詩を書いたことで知られています。

 

そんなガワーがこの世に甦って凍った雪を溶かそうというのが『ペリクリーズ』、冒頭に登場してこんなご挨拶を。

 

 

 古い昔の歌など一節聴きかせようと

 灰のなかから、ガウアー立ち戻りました、

 皆様方が気落ちしておられるなら、

 耳を喜ばせ、目を楽しませましょう。

 祭りの折に朗誦されてきたものなど、

 断食日の宵祭りや村祭りに。

 殿方やご婦人方の、

 徒然を慰めてきた妙薬を。

 この物語は人の誉を称えます、

  よきものはふるきほどよし

 もし、当世生まれの皆様方が、

 お気に召すなら、私の歌を聴いて。

   老いぼれのうたう歌を聴いて、

 心晴々と楽しまれるなら。

 私は生まれ変わり、生き返って

 ご用を務めます、灯ともなって。

 

                              1幕1場

 

 To sing a Song that old was sung,

 From ashes, auntient Gower is come,

 Assuming mans infirmities,

 To glad your eare, and please your eyes:

 It hath been sung at Feastiuals,

 On Ember eues, and Holydayes:

 And Lords and Ladyes in their liues,

 Haue red it for restoratiues:

 The purchase is to make men glorious,

 Et bonum quo Antiquius eo melius:

 If you, borne in those latter times,

 When Witts more ripe, accept my rimes; 

 And that to heare an old man sing,

 May to your Wishes pleasure bring:

 I life would wish, and that I might

 Waste it for you, like Taper light.

 

 for restoratiues = as a medicine    purchase = benefit     Et bonum quo

    Antiquius eo melius = And the older something good is, the better(Latin) 

    And that = And if     Waste = Use it up      Taper = Candle

 

 

雪が降り出す頃になると廊下に飾っていた一枚の絵、雪も解け、いまはそれを他の絵と取り換えるとき。

 

はみ出すほどの大胆な構図と色使い、石地蔵のそれぞれの表情に心が洗われます。

 

息子が小学校低学年時に描いたもので、人を超えるものへの絵心が天に届く筆使い、そう、子どもはみな天才です。

 

で、ガウアーあの世からこの世へ立ち戻って語る昔懐かしの夜語り傘地蔵。

 

昔々、ここはある山奥の村、お爺さんとお婆さんが住んでいました。子どもが育ちにくい時代で、生まれた子どもたちはほとんど赤ん坊のときに亡くなりました。年をとり、冬篭り期間に神棚に備える食糧確保もままならず、年の瀬を迎えてもお餅を買うこともできません。家のなかにはお茶と漬物以外何もありません。二人を助けてくれる村人はいません。みんな貧しかったのです。

 

土間に蓑に使われるスゲの葉が置かれていました。「そうじゃ、あのスゲで傘をこさえよう。餅が買えるかもしれん」そう言って、お爺さんとお婆さんはスゲ笠を作り始めました。剝(へ)ぎ板に和紙を貼って漆を塗る立派な傘ではなく、農作業や四国八十八箇所を巡るお遍路さんが頭に被るあの雨傘日傘のスゲ笠です。

 

 「ほんじゃ、まあ、婆さんや、行ってくるわい」「雪じゃけん、気をつけてな」外は冷たい雪の降る大晦日の朝、お爺さんはお婆さんに見送られて、編み上げたスゲ笠を背負って町に出かけて行きました。 

 

山を下った村のはずれに7体のお地蔵さまが並んでいました。首に赤いよだれかけをした可愛らしい石のお地蔵さまにお爺さんとお婆さんはいつも手を合わせていました。お地蔵さまは子どもの身代わりになったり子どもを守ってあげたりするので、お爺さんとお婆さんにとってはありがたい仏さまだったのです。この日もお爺さんは雪のなかで立ち止まって、婆さんに餅を持って帰れますようにとお地蔵さまに祈ってから町に向かいました。 

 

町に着いたお爺さんは「傘はいらんかえ〜」と声を張り上げて回りました。笠の数はわずか5体の一山でしたが、お爺さんからスゲ笠を買う人はいませんでした。「大晦日に傘を買う人はいないじゃろう。 せっかく手伝ってもろたのに、婆さん、がっかりするじゃろな」

 

仕方なくお爺さんは笠を売ることをあきらめ、持ってきた笠をそのまま背中に背負って、 とぼとぼと家に帰って行きました。しめ縄で囲われている峠の大岩に差しかかった頃には雪は本降りになっていました。大岩さまにぺこりと頭を下げて町はずれまでやってくると猛烈な吹雪になりました。「前がよう見えんのう、白い鬼になって惨めな爺を押しつぶそうってのかい。心配せんでええ、婆さんや、待っていてくれ。早く帰るのでのう」

 

ひょいと顔を上げると、そこにあの7体のお地蔵さまが おつむと肩に真っ白な雪を被って立っていました。「お地蔵さまは大雪の日も野っぱらに立ってわしを慰めてくださるんかいのう。おお、なんとしたこと、吹雪のなかで寒かろうに、やれ、これでは冷たかろう」お爺さんはお地蔵さまに積もった雪を一体づつきれいに払ってあげました。雪は後から後から激しく降ってきます。「そうそう、ちょうどいいものがありますでな。こんなもんでもちょいのしのぎにはなりましょう。この傘を被って雪をしのいでくだされ」お爺さんは持っていた笠をそれぞれのお地蔵さまの頭に被せてあげました。自分の傘も脱いで被せてあげました。

 

最後のお地蔵さまには笠がないことに気がつきました。「はて困った、このままじゃかわいそう、寒かろうに。そうじゃ、お地蔵さま、汚い手拭いで申しわけねえが、これで勘弁してくだせえ。笠ほどには役に立たないが、いくらかはしのげますよってな。ごめんくだせえましよ」お爺さんはそう言って被っていた手拭いを7体目のお地蔵さまの頭に被せて、手拭いの端を顎の下で結んであげました。

 

 「あらま、どうしましたの?手拭いまで売らっしゃったのかい?」頭を手で覆いながら帰ってきたお爺さんを見てお婆さんが言いました。「婆さん、すまないねえ。笠は売れんじゃった。でもな、帰り道にお地蔵さんが雪被って寒そうに立っとったで、スゲ傘をぜんぶ被せてやったわい」「へえ、それはまあいいことを。ようござんしたねえ。きっと喜んでおいででっしゃろ。お地蔵さまの役に立つならお餅なんてなくてもねえ」温かいお茶をすすりながらお爺さんとお婆さんはニコニコしていました。 

 

雪が冷たく硬くなっていくような大晦日の夜更けです。家の外から何やら賑やかな掛け声が聴こえてきました。お爺さんとお婆さんは申し合わせたように目を覚ましました。「なんじゃろか?」「鬼かもしれんが、景気のええ歌声もするのう」

 

自己満足して舞い上がる天上界〜〜〜苦楽入れ替わる人間界〜〜〜他人を責めるばかりの修羅界〜〜〜本能剥き出しの畜生界〜〜〜欲望に身を焦がす餓鬼界〜〜〜貪り怒り愚痴るばかりの地獄界〜〜〜男になるぞ〜〜〜女にもなるぞ〜〜〜天人にもなるぞ〜〜〜龍神にもなるぞ〜〜〜鬼にもなるぞ〜〜〜お爺さんの家はどこだ〜〜〜傘のお礼を届けに来たぞお〜〜〜 

 

掛け声は二人の家のほうに向かってきます。家の前まで来ると、ドッシーン、ズッシーン。そっと覗くと雪はやんで月の光が射しています。雪明りのなかに現れたのはスゲ傘を被った6体のお地蔵さまと手拭いを被った1体のお地蔵さま。橇に載せた米俵や野菜、魚、お酒、小判、お正月用の飾りもの、ご馳走、お菓子などをうたいながら家の軒先に山のように積んでいます。

 

作物に恵まれますように〜〜〜家内が安心安全でありますように〜〜〜災厄がありませんように〜〜〜旅しても無事でありますように〜〜〜長生きして天国に生まれ変りますように〜〜〜うたいながら帰って行くお地蔵さまの後ろ姿に手を合わせて、お爺さんとお婆さんは、やれありがたやオンカカカビサンマエイソワカと繰り返し唱えました。「オン」は帰命で、命の帰着点、南無と同じ、「カカ」は呵々大笑やカカさまという呼び名、微笑むお地蔵さまのこと、「カビサンマエイ」は尊いお方への讃歎、「ソワカ」は言葉の成就を願うことを、お爺さんもお婆さんもよく知っていたのです。 

 

手拭いでほっかむりをしたお地蔵さまが小さな包みを戸口に置いて行きました。包みを開けると、なかには真新しいお地蔵さまの染め絵の入った手拭いが何枚かたたんでありました。「あれあれ、お爺さんが気の毒だと思わっしゃったんじゃろか、こげなかわいげなことを」二人が荷物を家のなかに運び入れると、あっという間に正月を迎えるためのものでいっぱいになりました。二人は楽しそうにお地蔵さまがうたっていた歌を真似てうたいました。

 

東の空がうっすらと明るくなっり、真っ赤な太陽が白い雪を金色に照らし始めました。 

            

 一つとや ひと夜明くれば にぎやかで にぎやかで
 お飾り立てたり 松飾り 松飾り〜〜〜

 二つとや ポッタン ポッタン餅ついて 餅ついて
 一つあげたや婆さんに 婆さんに〜〜〜

 

お地蔵さまからの贈り物のおかげで、お爺さんとお婆さんは近所の子どもたちとつきたてのお餅をおいしくいただいて、新しい年を迎えることができました。

                                                                                         

ここでとっぴんぱらりのぷうとはまいりませぬ、ご想像をいましばらく。

 

称賛を聴きつけて妬み嫉む悪心の輩がぞろぞろと列をつくってお地蔵様参り、頭にスゲ傘や手拭いを被せる者が相次ぎました。わが利を祈り願う者には天も顔をそむけましょう。この物語は人を光輝かせるもの、吹雪に晒される石地蔵を哀れと思う心は天に通じるのです。東の果ての国の政治家の驕りたかぶり、人びとの心の緩みを案じます。いずれあらためてよみがえり、あなたさまのご用を務めます、灯ともなって。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読
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