シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
<< 指輪―『ヴェニスの商人』3幕2場 | main | マーロウ = シェイクスピア説―『ヘンリー6世』(第3部)2幕5場 >>
ジェシカ―『ヴェニスの商人』2幕3場

 

十把一からげには論じられないが、英国のEU離脱、アメリカファーストのトランプ次期大統領、フランスやドイツ、イタリアに台頭する保護主義、相次ぐテロ、難民の流入等がヒト・カネ・モノの自由な往来に影響し、反グローバリズム、排外主義、民主主義の危機濃厚な2017年の幕開け。

 

正月だからまず笑おう、おめでとうでは始まらない。

 

季節は巡り桜の木の枝先に小さく膨らむものがあっても、私たちの住む地球社会は急速に変質、液状化しつつあるのではないでしょうか。

 

どの国も政治は国家単位となって、国家間の軋轢、国内のひずみが拡大、格差は広がり、人びとの不満が弱者いじめ、人種差別、親子分断という心の問題、命の問題となって顕在化してきています。

 

これらの社会現象から想起させられるのが『ヴェニスの商人』のユダヤ人父娘。

 

ジェシカはキリスト教徒への復讐に燃える高利貸しの父シャイロックに見切りをつけ、騙し、白人のキリスト教徒の恋人と駆け落ちしようとします。

 

 

 さようならラーンスロット

 ああ、ほんとにひどい私の罪

 お父さまの子どもであることを恥じるなんて、

 でもね血はお父さまから受け継いでも、

 心は違うの。ああ、ロレンゾー

 約束を守ってね私の苦しみはこれが最後、

 キリスト教徒になって、あなたの愛する妻に。

 

               2幕3場

 

 

Ies. Farewell good Lancelet.

 Alacke, what hainous sinne is it in me

 To be ashamed to be my Fathers childe,

 But though I am a daughter to his blood,

 I am not to his manners: O Lorenzo,

 If thou keepe promise I shall end this strife,

 Become a Christian, and thy louing wife.

  

   manners = moral character 

 

 

最後の2行が strife / wife の rhyming couplet(対句)になってこの場が終わっています。

 

余韻が残り、ユダヤ人シャイロックの召使いラーンスロットは白人の貿易商人アントーニオの召使いになります。

 

遥かいにしえの紀元前64年、ローマ帝国はシリアを征服してユダヤをシリアに組み入れました。

 

前37年、ヘロデがユダヤの王としてパレスチナの中心都市エルサレムを統治、ユダヤ人にローマ皇帝礼拝を強要。

 

前7年9月15日、いや、前4年?いやいや、前2年の6月17日、正確な生年月日は分らぬままに、イエスキリストがマリアとヨセフの長男としてベツレヘムの馬小屋で生まれました。

 

ヘロデはユダヤの救世主誕生の噂を耳にするや子殺しを画策、恐れた両親はエジプトに逃れ、ヘロデの死と同時にナザレ村に帰ってきて、イエスはそこで育ちました。

 

紀元30年4月7日、ゴルゴタの丘で青年イエスは公開処刑されましたが、生前の予告通り3日目に甦り、その後40日間弟子たちを導いたと言い伝えられています。

 

132〜5年、ユダヤ人はローマ軍に必死の抵抗を続けますが、鎮圧され、土地を追われ、これをもってユダヤ独立戦争が終結します。

 

ローマ皇帝はユダヤという属州の名称そのものを廃止してシリア・パレスチナ州に変名、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教それぞれにとっての聖地エルサレムは完全な異教の町とされ、その門をくぐったユダヤ人は処刑され、帝国全土を通じてユダヤ人弾圧が当たり前のことになったのです。

 

さて、1492年、スペイン女王イサベル1世の後援を得てコロンブスがバハマに到達後ヴェニスは東西を結ぶ国際貿易都市に発展しますが、同時にスペインからはユダヤ人が追放されました。

 

19世紀後半、第1次世界大戦中にアラブ・イスラエル紛争が勃発、1948年、パレスティナにユダヤ人の国イスラエルが建国されますが、そこで生まれ育ったパレスティナ人は国外へ追放されて大量難民に。

 

思い出すのは、ヒトラーがオランダ、ポーランド、フランスに侵攻する混乱のさなか、バルト3国の一つリトアニアで5,000人のユダヤ人を、本国の許可なしに、シベリア、日本経由で救った杉原千畝(ちうね)領事の人道的行為。

 

私たちはいま、ユダヤ人を歴史と文化を共有する一つの民族としては分類せず、民族独自の国家としてイスラエルがあることと世界に1,500万弱のユダヤ人が生活していることを知るのみ。

 

娘に裏切られ全財産を巻き上げられた上にキリスト教に改宗させられたユダヤ人シャイロックは、このような歴史的現実を背負ってこの新しい年にどのような姿で立ち現れるか。

 

父親に愛想をつかし父が貯めた金や宝石の入った箱を盗み出して白人のキリスト教徒と結婚するユダヤ娘ジェシカの行く末は。

 

いつの世も追われるのはユダヤ人だけではありません。

 

生まれ育った地から追われた子どもたちがこの日本列島で命を損なうほどのいじめに遭っているらしい。

 

不寛容な社会がさらに不寛容になれば、強制改宗などという人間の心を分断する行為が行われることにもなりかねない。

 

地球も人もひび割れる年を迎えて、私たちは心をどのように静めたらいいのか。

 

何が起こるか分からない、何が起こってもおかしくない、でもね、心だけは割れてはいけないのです。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読 

http://shaks.jugem.jp

 

 

| - | 20:10 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
スポンサーサイト
| - | 20:10 | - | - | pookmark |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://shaks.jugem.jp/trackback/499
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< September 2017 >>
SPONSORED LINKS
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
ARCHIVES
モバイル
qrcode
LINKS
PROFILE