シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
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さあお姫さま、起きなさい ―『シンベリン』2幕3場

 

この季節、盛唐時代の猛浩然のごとくに眠い。

 

気だるくて朝が来ても気づかない、あちこちでコジュケイが啼いているらしい、一晩中雨が降り風がガタピシやっていたから満開の桜の花も散ったんじゃないか、うつらうつら、枕抱えてもうちょっとあと5分くらい、夢のなかに。
 

シンベリンの王宮では王さまの先妻の娘イモジェンが眠っていて、その枕もとで楽士たちがうたっています。
 

 

 ほら、ほら、天国の門のところで雲雀が、

 太陽の神様もお目覚めに、

 日輪の馬車を引く馬たちが飲んでいます

 花々のグラスに溜まった朝露を。

 眠っていたキンセンカも金の蕾を開いて

 なにもかもがきれいな夜明け、さあお姫さま、起きなさい、

 起きなさい、起きなさい。

 

                2幕3場

 

 

 Hearke, hearke, the Larke at Heauens gate sings,

 and Phœbus gins arise,

 His Steeds to water at those Springs

 on chalic'd Flowres that lyes:

 And winking Mary-buds begin to ope their Golden eyes

 With euery thing that pretty is, my Lady sweet arise:

 Arise, arise.

 

  Phœbus gins = Apollo (sun god) begins   

    winking Mary-buds = closed marigold buds

 

 

クロートンという半馬鹿王子に執拗に求婚され、継母からは毒殺されそうになるなかで、ひときわ輝きを増すイモジェンの可愛いらしさ、美しさ、気丈夫さは比類なく、歌はその寝姿になんとも似つかわしい。

 

My Lady sweet を描くとき、シェイクスピアは間違いなく夢、希望、願望の対象となるマドンナの幻を追いかけていたのでしょう。

 

最後まで権力者の愚行を描き死を扱ってきたシェイクスピア、悲劇にも喜劇にも長けた劇作家のキャリアの締め括りが、このイモジェンの登場する『シンベリン』です。

 

いまはもはや悲劇へと進むこともなく、運命と意思の力を以て新しい命を蘇らせるべく死の向こう側を強引にこじ開けて締め括っているあたり、『シンベリーン』は不条理な時代を生き抜く人びとに対するオマージュでもあったでしょうか。

 

国王一座は、室内劇場ブラックフライアーズの賃借契約を取り付け、権利の七分の一を獲得、以後、夏と冬、半野外劇場のグローブ座と室内劇場を交互に使用、宮廷でもかなりの演目を上演するようになっていました。

 

1609年、45歳のとき、シェイクスピアは154編のソネットを出版し、『シンベリーン』を上演し終えて、ストラットフォード・アポン・エイヴォンに全面引退しました。 

 

早すぎる引退に思えるけれども、潮時だったのです。

 

翌1610年に議会は課税問題で国王と妥協ならず解散、疫病が蔓延してロンドンは死の様相を呈し、劇場は閉鎖されたのでした。

 

新しく蘇る命を求めて故郷に帰還したシェイクスピア。

 

引退を決意したシェイクスピアにはおそらく憔悴もあったでしょう、それだけにイモージェンは劇作家自身をも慰労するお姫様として登場しており、歌はその寝姿になんとも似つかわしく思えてなりません。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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