シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
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祭りの終わり−『十二夜』5幕1場

 

オリヴィアはセザーリオ(男装のヴァイオラ)の双子の兄セバスチャンが登場するや、取り間違え、何も知らないセバスチャンは夢見心地になって、二人はあっさり結婚してしまいます。

 

舞台の現実として受けとめ笑うしかありませんが、公爵もオリヴィアにこっぴどく罵倒された末に、セザーリオが女だと知るや、あらよあらよと言う間に結婚。

 

直前、オリヴィア、ヴァイオラ、公爵が顔を合わせたところに道化のフェステ、脳足りんのアンドルー、酔っ払いのトウビーが加わり、こんがらがった糸が縺れにもつれます。

 

 

オリヴィア ご用の向きがいつもの調べでしたら、

 私の耳にはほんとに疎ましい

 音楽をきいたあとの喚き声と同じです。

公爵 いつまでもそんなに残酷なのか?

オリヴィア いつまでも同じなのです。

公爵 ひねくれた心がかね?残酷な姫君よ

 その恩知らず、その情け知らずの祭壇に

 私の魂は真心のこもった祈りを捧げてきた

 この世にかつてなかった程に。私はどうすればいい?

オリヴィア 何なりと、ご身分にふさわしいことを。

公爵 私だって、(その気になれば)

 エジプトの盗賊のように、いまわの際に

 愛する者を殺しもしよう。(野蛮な嫉妬も、

 時には気高く思われる)が先ずはききたまえ。

 真心を歯牙にもかけずよくぞ捨ててくれた、

 その手先がどんなものかは薄々分かっている

 あなたの愛に私が占める位置から私を奪うものを。 

 大理石の胸を持った暴君として生きて行くがいい。

 だがこの小僧は、あなたが愛しているんだろうが、

 こいつを、天に誓って言う、私も可愛がっているが、

 あなたのその残酷な目から引きちぎってやる

 冠を被って小僧が座り込んでいるのが私の恨みの種。

 来い小僧、私の心は壊れたぞ。

 愛する小羊を生贄にして、

 小鳩に潜む鴉の心を恨み返してやる。

ヴァイオラ 歓んで、いそいそと、心から、

 お気持ちが安らぐなら、一千回でも死にます。

オリヴィア どこに行くのセザーリオ

ヴァイオラ 愛する方の後を追って。

 この目より私の命より何よりも慕わしく、

 将来妻を愛するようなことがあっても、

 それよりももっともっと恋しいお方。

 これが嘘なら、天よ、証人となって、

 愛を汚した罪で私の命を。

オリヴィア ああ何という、何という騙されようなの?

ヴァイオラ 誰が騙した?誰が悪いことをした?

オリヴイア 自分を忘れたの?それほどに時間が経ったの?

 神父様を呼んできて。

公爵 さあ、行くぞ。

オリヴィア どこへ?セザーリオ、私の夫、待って。

公爵 夫?

オリヴィア そう夫よ。そうでないと言える?

公爵 この人の夫、なのか?

ヴァイオラ いいえ、違います。

オリヴィア まあ、恐いからって何て卑劣な、

 礼儀作法の反則技よ。

 怖がらないでセザーリオ、しあわせを摑むの、

 ありのままの自分でいいの、そうしたら

 怖がっている人と同じ身分になれるのよ。

 僧侶登場

 ああ神父様。

 神父様、お願い

 ここで打ち明けてください、さっきまでは

 伏せておくつもりでしたけど、明かさなければ

 機が熟す前に。ご承知の

 今取り交わした事を、この方と、私との間の。

僧侶 とこしえに変わらぬ愛の絆の契約、

 互いに手と手を交わして結ばれ、

 神聖に唇を合わせて証しを立てられ、

 指輪を取り交わして固められたもの、

 この約束の儀式一切は

 私がこれを執り行いました、宣誓して。

 その時から、私の時計の示すところでは、墓場へ

 歩みますことふたときに過ぎません。

公爵 ええいこのしらばっくれた子狐。何になるか

 貴様の毛皮に白髪がばらまかれる頃には?

 それとも貴様の才覚が先走って、

 踊ったつもりがすってんころりんか。

 さらばだ、一緒になれ、足を向けろよ、

 貴様と、俺が(今後)決して出遭わない方向に。

ヴァイオラ ご主人様、違います。

オリヴィア ああそんなこと言わないで、

 少しは自信を持って、怖がり過ぎよ。

 サー・アンドルー登場。

アンドルー 頼む医者だ、すぐ

 トウビーんところへ医者を。

オリヴィア どうしたのです?

アンドルー あいつが俺の頭をかち割った、

 サー・トウビーの頭も血だらけだ。頼む助けて

 くれ、40ポンド出して家にいたほうがよかった。

オリヴィア 誰がこんなことをアンドルー

アンドルー 公爵んとこの、セザーリオだ。

 臆病者だと思っていたが、悪魔の、化け物だ。

公爵 私のところのセザーリオ

アンドルー うわあここにいる。俺の頭をかち割ったな

 何もしないのに、俺がしたのは、やれと言われたからだ

 トウビーに。

ヴァイオラ 何でそんなことを、怪我をさせた覚えはない。

 理由もなく剣を抜いてかかってきたが、

 丁寧に話して、怪我なんかさせなかったじゃないか。

 トウビーと道化登場。

アンドルー 血だらけの頭が怪我だろ、怪我させた

 じゃないか。血だらけの頭を何とも思わないのか。

 ほれトウビーがびっこを引いて来た、きいてみろ。

 酔っぱらってさえいなきゃ、やっつけるところだった

 こてんぱんに。

公爵 どうなすった、一体全体?

トウビー どうもこうも、怪我させやがった、それでおしめえよ。

 おい、外科医のディックを知らねえか、阿呆?

道化 ああ酔っぱらっているよトウビー1時間前から。あの人の目は

 朝の8時に沈んでいるよ。

トウビー ならば悪党だ、八拍子ののろま踊り。俺は

 酔っぱらいの悪党は大嫌いなんだ。

オリヴィア 向こうに連れてってくれない?誰がこんなことを

 二人に?

アンドルー 介抱してやるよトウビー、一緒に包帯してもらおう。

トウビー 馬鹿が介抱してくれるってか、気取り屋の、

 ごろつきめが。薄っぺら野郎の、間抜けが?

オリヴィア 寝かしつけて、傷を手当しておやり。

 セバスチャン登場。

セバスチャン すみませんお姫様御親戚を怪我させてしまって。

 ですが血を分けた兄弟でも、

 身の安全のためには仕方がなかったことでしょう。

 変な顔をしてらっしゃいますね、どうやら

 ご機嫌を損ねてしまったようだ。

 許してください(どうか)誓いに免じて

 取り交わしたばかりの、先ほどの。

公爵 一つの顔、一つの声、一つの着物、しかも二人、

 自然のなせる鏡の像、つまり、二人に非ず。

 

                5幕1場

 

 

Ol. If it be ought to the old tune my Lord,

 It is as fat and fulsome to mine eare

 As howling after Musicke.

Du. Still so cruell?

Ol. Still so constant Lord.

Du. What to peruersenesse? you vnciuill Ladie

 To whose ingrate, and vnauspicious Altars

 My soule the faithfull'st offrings haue breath'd out

 That ere deuotion tender'd. What shall I do?

Ol. Euen what it please my Lord, that shal becom him.

Du. Why should I not, (had I the heart to do it)

 Like to th'Egyptian theefe, at point of death

 Kill what I loue: (a sauage iealousie,

 That sometime sauours nobly) but heare me this:

 Since you to non-regardance cast my faith,

 And that I partly know the instrument

 That screwes me from my true place in your fauour:

 Liue you the Marble-brested Tirant still.

 But this your Minion, whom I know you loue,

 And whom, by heauen I sweare, I tender deerely,

 Him will I teare out of that cruell eye,

 Where he sits crowned in his masters spight.

 Come boy with me, my thoughts are ripe in mischiefe:

 Ile sacrifice the Lambe that I do loue,

 To spight a Rauens heart within a Doue.

Vio. And I most iocund, apt, and willinglie,

 To do you rest, a thousand deaths would dye.

Ol. Where goes Cesario?

Vio. After him I loue,

 More then I loue these eyes, more then my life,

 More by all mores, then ere I shall loue wife.

 If I do feigne, you witnesses aboue

 Punish my life, for tainting of my loue.

Ol. Aye me detested, how am I beguil'd?

Vio. Who does beguile you? who does do you wrong?

Ol. Hast thou forgot thy selfe? Is it so long?

 Call forth the holy Father.

Du. Come, away.

Ol. Whether my Lord? Cesario, Husband, stay.

Du. Husband?

Ol. I Husband. Can he that deny?

Du. Her husband, sirrah?

Vio. No my Lord, not I.

Ol. Alas, it is the basenesse of thy feare,

 That makes thee strangle thy propriety:

 Feare not Cesario, take thy fortunes vp,

 Be that thou know'st thou art, and then thou art

 As great as that thou fear'st.

 Enter Priest.

 O welcome Father:

 Father, I charge thee by thy reuerence

 Heere to vnfold, though lately we intended

 To keepe in darkenesse, what occasion now

 Reueales before 'tis ripe: what thou dost know

 Hath newly past, betweene this youth, and me.

Priest. A Contract of eternall bond of loue,

 Confirm'd by mutuall ioynder of your hands,

 Attested by the holy close of lippes,

 Strengthned by enterchangement of your rings,

 And all the Ceremonie of this compact

 Seal'd in my function, by my testimony:

 Since when, my watch hath told me, toward my graue

 I haue trauail'd but two houres.

Du. O thou dissembling Cub: what wilt thou be

 When time hath sow'd a grizzle on thy case?

 Or will not else thy craft so quickely grow,

 That thine owne trip shall be thine ouerthrow:

 Farewell, and take her, but direct thy feete,

 Where thou, and I (henceforth) may neuer meet.

Vio. My Lord, I do protest.

Ol. O do not sweare,

 Hold little faith, though thou hast too much feare.

 Enter Sir Andrew.

And. For the loue of God a Surgeon, send one pre-

 sently to sir Toby.

Ol. What's the matter?

And. H'as broke my head a-crosse, and has giuen Sir

 Toby a bloody Coxcombe too: for the loue of God your

 helpe, I had rather then forty pound I were at home.

Ol. Who has done this sir Andrew?

And. The Counts Gentleman, one Cesario: we tooke

 him for a Coward, but hee's the verie diuell, incardinate.

Du. My Gentleman Cesario?

And. Odd's lifelings heere he is: you broke my head

 for nothing, and that that I did, I was set on to do't by sir

 Toby.

Vio. Why do you speake to me, I neuer hurt you:

 you drew your sword vpon me without cause,

 But I bespake you faire, and hurt you not.

 Enter Toby and Clowne.

And. If a bloody coxcombe be a hurt, you haue hurt

 me: I thinke you set nothing by a bloody Coxecombe.

 Heere comes sir Toby halting, you shall heare more: but if

 he had not beene in drinke, hee would haue tickel'd you

 other gates then he did.

Du. How now Gentleman? how ist with you?

To. That's all one, has hurt me, and there's th'end on't:

 Sot, didst see Dicke Surgeon, sot?

Clo. O he's drunke sir Toby an houre agone: his eyes

 were set at eight i'th morning.

To. Then he's a Rogue, and a passy measures panyn: I

 hate a drunken rogue.

Ol. Away with him? Who hath made this hauocke

 with them?

And. Ile helpe you sir Toby, because we'll be drest to-

 gether.

To. Will you helpe an Asse-head, and a coxcombe, &

 a knaue: a thin fac'd knaue, a gull?

Ol. Get him to bed, and let his hurt be look'd too.

 Enter Sebastian.

Seb. I am sorry Madam I haue hurt your kinsman:

 But had it beene the brother of my blood,

 I must haue done no lesse with wit and safety.

 You throw a strange regard vpon me, and by that

 I do perceiue it hath offended you:

 Pardon me (sweet one) euen for the vowes

 We made each other, but so late ago.

Du. One face, one voice, one habit, and two persons,

 A naturall Perspectiue, that is, and is not.

 

  vnauspicious = unfavorable   becom = be fitting for   non-regardance =

     oblivon    screwes = wrenches    Minion = Darling    tender = regard  

     iocund = cheerfully    apt = ready    occasion = necessity 

     halting =  limping    tickel'd = chastised    other gates = in other ways

     Sot = Fool

 

 

ギリシア神話のエロスの神はアフロディーテの子で、ローマ神話のキューピッドと同じ、めくらめっぽうに引き絞られた運命の矢に射抜かれたらさいご、自制の利かぬエロスへの渇望となり、乱痴気騒ぎに陥るほかありません。

 

マルボーリオは担がれたのたのですが、失意の底に沈んだ公爵はここで恋の矢にブスリ射抜かれたのか、セザーリオに向かって女の衣裳を着たところを見せろと言い出します。

 

彼らは皆真剣かつ深刻に演じていて、悲劇の極み、ちょっと理解し難い、想像できないけれども、多数決民主党の無茶苦茶な権力乱用、結論ありきの国会運営、政治の私物化、嘘、フリ、良心無しのやりたい放題にこの国の人びとの寛容ぶりというか、鈍感ぶりというか、恐るべき弛緩ぶりは私には到底信じ難い、あり得ない、この緩みっぱなしの居心地の悪さからすれば、こんな恋の乱痴気騒ぎの悲劇も、近視眼的にでなく遠望すれば、極上のロマンチックコメディーに見えないであろうか。

 

ただし、恋愛感情は祝婚的雰囲気ばかりでいけない、現実の多くの段階を踏んで愛の上昇に繋ぎ、恋を愛に変容させなければならない。

 

2組の結婚に繋げるための想像力は、祭りの最終日、つまり日常の現実世界への回帰の気分を演出しなければならない、そう考えたであろうシェイクスピアらしいドラマツルギー。

 

つまり、祝祭の日にそぐわないピュリタン的堅物のマルボーリオ、道化フェステ、その他の阿呆どもの色恋沙汰が2組の結婚に無遠慮に絡まっている、彼らこそ日常の世界が漂よい始めた祝祭の最後の夜を彩る主役たり得ているのではないか。

 

理解し難い、想像できない、いや、リアリティーがある、説得力がある?

 

それぞれの登場人物の心の動きを把握して一人多役を演じ分けるのは至難の技だろうが、自分自身のざわつく心をうまく按配してメリハリある声に昇華させなければならない、人生体験と想像力が試される場面に違いない。

 

十二夜とは、クリスマスから12日目のエピファニー(Epiphany、顕現日、この日キリスト生誕に際し東方の三博士がベツレヘムを訪れたのを記念する1月6日の祭日)の夜のことです。

 

それぞれの解釈があっていいのでしょう、シェイクスピア自身この祝婚劇にわざわざ副題を付けて曰く「お気きに召すままに」(What You Will )と。

 

この副題からお祭りの無時間と刻々と時を刻む日常世界の時間を一つに寄り合わせた劇作家の意図が窺えるのです。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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