シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
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ダークレディー−ソネット106

 

 

驕り政権、権力に媚びる忖度の蔓延、国民主権の侵害、人間の尊厳棄損、猛暑続き、日に日に渇き萎んで行くいのちの気配。

 

若者たちは元気か、瑞々しいか、ロマンはあるか、男女の思慕の情は健在か。

 

かつて七五調のリズムで若者に熱狂的に受け入れられた藤村の詩集『若菜集』。

 

 まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき

 前にさしたる花櫛の花ある君と思ひけり

 やさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは
 薄紅の秋の実に人こひ初めしはじめなり

 わがこゝろなきためいきのその髪の毛にかゝるとき
 たのしき恋の盃を君が情に酌みしかな

 林檎畑の樹の下におのづからなる細道は
 誰が踏みそめしかたみぞと問ひたまふこそこひしけれ   

 

初恋、少女は12〜3歳で髪を結いあげたばかり、二人は林檎畑で出会ったのでなく幼馴染み、思いがけずこぼした溜息が相手の髪の毛に、そんな出会いを重ねてできた細い道、それを誰が踏んでできたんでしょうねと少女は問いかけたらしい。

 

少年は髪結いした少女に胸一杯だが、少女は可憐にうつむいて咲く花か、それともまだ幼さを残している少年をからかうゆとりある存在か。

 

もう一つ、牧水の作。

 

 白鳥は哀しからずや空の青海の青にも染まず漂う

 

 幾山河越えさり行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく

 

 いざ行かむ行きてまだ見ぬ山を見むこのさびしさに君は耐ふるや

 

失恋したが恨みも喪失感も呑み込んで一歩を踏み出そう、そんな思いを五七調にうたい上げたのです。

 

これらの詩が生まれた背景に君は時代の何を嗅ぎ取るだろうか。

 

16世紀後半にイタリアから導入されたソネット(sonnet、十四行詩)がロンドンで爆発的な人気を博し、シェイクスピアもソネットを書きました。

 

シェイクスピアの詩才は154篇を収めたSHAKE-SPRARES SONETS (1609 年、クオート版)に遺憾なく発揮されていることはご承知の通り。

 

友人の間に配布されたものが結果的に1609年に印刷に付されました。

 

ソネットのライムスキーム(rhyme scheme、押韻の型)は詩人によりさまざまで、シェイクスピアはa-b-a-b-c-d-c-d-e-f-e-f-g-g というように音合わせをしています。

 

  

 古い時代の年代記をひもとくと、

 このうえなく美しい人びとが描かれていて、

 その美しさが美しい韻律でうたわれ、

 亡くなった貴婦人や、眉目秀麗の騎士を称えている、 

 そこに描かれた美の最高の美を見ると、

 手、足、唇、目、眉など、

 古人のペンが描きたかったことが分かる

 いまあなたが湛える美しさを。

 彼らの賛辞はすべて予言であり、

 彼らは予言の目で見るしかなく、

 あなたの美しさをうたいあげる力はなかった。

  いまあなたをを仰ぎ見る私たちでさえ、

  讃美する目はあるが、称賛する言葉が浮かばない。 

 

               ソネット106

 

 

 WHen in the Chronicle of wasted time,

 I see discriptions of the fairest wights,

 And beautie making beautifull old rime,

 In praise of Ladies dead, and louely Knights,

 Then in the blazon of sweet beauties best,

 Of hand, of foote, of lip, of eye, of brow,

 I see their antique Pen would haue exprest,

 Euen such a beauty as you maister now.

 So all their praises are but prophesies

 And for they look'd but with deuining eyes,

 They had not still enough your worth to sing :

  For we which now behold these present dayes,

  Haue eyes to wonder, but lack toungs to praise.

 

  wasted = past   wights = people  blazon = poetic catalogue of virtue

       maister = possess   for = as   deuining = prophetic   we = even we

 

 

いかがであろうか、言葉は選び抜かれ、ライムスキームが心の琴線に触れ、胸に溢れる命の泉、いや、押韻のパターンにはなっているが思うように言葉が出て来ない、歯がゆい、じれったい、いじらしく可愛らしく美しい女性を心行くまで讃美することができない、もどかしい、腹立たしい。

 

あれもいい、これもいい、それもいいではないか、ここにあるのは青春の情熱のほとばしり。

 

相手の女性が誰なのかは分からない、ダークレディー(Dark Lady)と称されていますが、肌が黒いのではないでしょう。

 

故郷ストラトフォードには妻と子どもがいたが、ロンドンに出てきたシェイクスピアは一人の女性に出逢った、ああ君はそこにいたのかと。

 

藤村や牧水の傍らにマドンナがいたように、この女性のおかげでシェイクスピアは溢れるパッションを「時」と「恋」を主題とする十四行詩に昇華させ、英国詩のなかで最高位を占めることになったのです。

 

時代がどう動こうと自分が生きる世界の美しさを称え守ろうとする、詩人は美の基準というものを持っているのです。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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