シェイクスピア朗読

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学問の戒め―『じゃじゃ馬慣らし』1幕3場

 

自然災害に見舞われっ放しで世の人びとが疲弊し切っているのに、これまでの学問の蓄積、データや知見、情報がさっぱり生かされていない。

 

災害だろうが何だろうが、もてはやされるのは権力者、強者、勝利者であり、政権与党のみなさんは、新聞も読まず、考えず、会議せず、異論を認めず、選挙で得た多数を背に品なく言いたい放題、速すぎるスピード社会のため結果にのみ心が奪われ、地道に政策プロセスを踏むことが馬鹿馬鹿しくなっているらしい。

 

うわべを繕って先を急げば不正を招き、いずれ負のスパイラルを滑走することに。

 

そもそも学ぶとはどういうことだったのか、何のための教育だったのか。

 

世界に冠たるこの国の寺子屋教育の起源は鎌倉時代に寺院で僧侶が檀家の子弟の為に行ったことが始まり。

 

武士官僚向けの儒学中心の藩校とは別に町民が寺子屋を運営するようになり、日常生活に必要な読み・書き・ソロバンを習得させる場が設けられたのです。

 

寺子屋の授業料は生活の足しになる程度の米や穀物で、教える者はボランティア。

 

幕末には女の子も寺子屋に通い、裁縫、家での躾、女の道を教わりました。

 

江戸が世界に類のない大衆文化を生み出し得たのは、町民に教育が行き渡り、平仮名と漢字が読み書きできたから。

 

寺子屋は全国に2万軒ほどあり、その数は現在の小学校の数とほぼ同数、貨幣経済が進んだ社会にあっては農夫も漁師も大工も商人も読み書きができなければ仕事ができなかったのです。

 

読む力、考える力をつけることが学びの基礎であり、言葉の向こう側を見抜く素養を身につけずして学問云々など言えたものではない。

 

『じゃじゃ馬馴らし』にこんなやりとりが。

 

 

ルーセンショー トラニオ―、見たいと憧れていた

 美しのパデュア、学芸の都、

 いまこうして実り多いロンバルディーに着いた、

 偉大なイタリーの楽園、

 父の愛情と許しを得て

 父の意向で、お前という

 信頼できる連れに恵まれ

 万事準備完了、

 一呼吸入れて、どのように学べるものか

 調べよう、知識を得る手立てを。

 真面目な市民として名立たるピザの都に、

 生れたのだ、私の父は、

 世界を股にかけた大商人。

 ヴィンセンショ―は、ペンティヴォリー家の出、

 そのヴィンセンショ―の息子は、フローレンスで育ち、

 周りの期待に応えるべく運命づけられている

 この好運を徳をもって飾り立てなければならない。 

 だからトラニオ―、さしあたり私が学ぶべきは、 

 高い徳と聖なる学問の分野

 ここに心を寄せれば、しあわせな待遇が、

 それも徳によって得られるだろう。 

 お前の考えを聞かせてくれ、ピザを出て、

  パデュアにやって来たのは、浅い水たまりを

 捨てて、深い淵に身を浸し、

 喉の渇きを癒そうと思ったからだ。

トラニオ― 失礼ながら、旦那様。

 何事も旦那様のお気持ちがそのまま私の気持ち、

 御決意どうぞそのままお続けになり、

 学問の甘き果実を召し上がりなさいませ。

 ただし(旦那様)結構とは存じますが

 徳だとか、倫理だとか、

 例のストイックとか、ストックとかはご勘弁を、

 アリストテレスのお小言に気を引かれるとか、

 オーヴィッドなんかも。きっぱりお捨てなさいませ。

 お仲間と口論なさったら、

 ありきたりなお喋りにレトリックをお効かせなさい、

 音楽と詩は、命をよみがえらせ、

 数学、形而上学は

 気が向いたらお好みのままに。

 利得生ぜず、悦び伴わざるところには。

 手身近かに申せば、好きなことを勉強なさいませ。

 

               1幕3場

 

 

Luc. Tranio, since for the great desire I had

 To see faire Padua, nurserie of Arts,

 I am arriu'd for fruitfull Lumbardie,

 The pleasant garden of great Italy,

 And by my fathers loue and leaue am arm'd

 With his good will, and thy good companie.

 My trustie seruant well approu'd in all,

 Heere let vs breath, and haply institute

 A course of Learning, and ingenious studies.

 Pisa renowned for graue Citizens

 Gaue me my being, and my father first

 A Merchant of great Trafficke through the world:

 Vincentio's come of the Bentiuolij,

 Vincentio's sonne, brough vp in Florence,  

 It shall become to serue all hopes conceiu'd

 To decke his fortune with his vertuous deedes:

 And therefore Tranio, for the time I studie,

 Vertue and that part of Philosophie

 Will I applie, that treats of happinesse,

 By vertue specially to be atchieu'd.

 Tell me thy minde, for I haue Pisa left,

 And am to Padua come, as he that leaues

 A shallow plash, to plunge him in the deepe,

 And with sacietie seekes to quench his thirst.

Tra. Me Pardonato, gentle master mine:

 I am in all affected as your selfe,

 Glad that you thus continue your resolue,

 To sucke the sweets of sweete Philosophie.

 Onely (good master) while we do admire

 This vertue, and this morall discipline,

 Let's be no Stoickes, nor no stockes I pray,

 Or so deuote to Aristotles checkes

 As Ouid; be an out-cast quite abiur'd:

 Balke Lodgicke with acquaintance that you haue,

 And practise Rhetoricke in your common talke,

 Musicke and Poesie vse, to quicken you,

 The Mathematickes, and the Metaphysickes

 Fall to them as you finde your stomacke serues you:

 No profit growes, where is no pleasure tane:

 In briefe sir, studie what you most affect.

 

  approu'd = reliable    breath = rest    ingenious = intellectual Trafficke = Business    

    become = befit    serue = fulfill  deck = adorn    plash = pool    sacietie = satiety   

    Pardonato = Pardon me     Balke Lodgicke = Bandy words    quicken = revive    

    stomacke = appetite   tane = taken

 

 

大金持ちの跡取り息子、親の七光りで、基礎的素養もない半馬鹿ボンボンの衒学的学問談義、これにトラニオ―が皮肉っぽく応じています。

 

艱難は汝を玉にするか?労多くして功少なし、闇雲に頑張って上辺を取り繕ってもどうなるものでもない。

 

好きこそものの上手なれ?興味が意欲を掻き立てることは確か、だが、オタク的興味に嵌まったらどうなるか。

 

江戸の日本は地方分権では世界一の先進国でした。

 

藩体制の地方分権が徹底して庶民のニーズを中心に行政が展開されました。

 

庶民の生活を基本とする地方政権を尊重する政治が目標でしたので、各藩は地域性を生かした経済活動を競い、藩別の行政に幕府の支配力は及びませんでした。

 

結果として、高度の貨幣経済が育ち、スペイン・イタリア・英・仏よりも栄えた世界一の先進国に。

 

明治維新政府はこれ否定、西洋化の一大要素である強国、大国化を目指して中央集権国家に、抑制された文化・規範となっていた武道を武器に変え、軍事主導体制の独善国日本を誕生させてしまったのです。

 

忘れてはいけません、江戸町民に学問を身につけさせ平和な平等社会を実現させたのは、地方分権制度と各藩の寺子屋教育だったのです。

 

都市と地方の在り方を考えれば、国家主導型の社会でなく、自立した個人の多様な声が反映される社会を目指すべきです、個人が自分の特技や体験、知識を売ることのできる生き甲斐ある社会を樹立するために。

 

システムの機能不全と超高齢化、人口減少に備えて江戸に学び、自分の特技や体験、知識を売ることのできる生き甲斐ある社会を、

各地にある小江戸的視点も含めた方法と論を束ねて大江戸学を、国家主導型の社会でなく自立した個人の多様な声が反映される社会を目指すべきではないでしょうか。

 

続持可能な循環型圏域づくり、寺子屋精神で学びの体系化、武道美に基づく礼儀作法、そして自然災害情報システムといのちの安全保障体制の確立。

 

政治家、国を守る、いのちを守ると言うが、仮想敵国への国防策などではなく、天災に翻弄される人びとに対する国防策にこそ取り組むべきでしょう。

 

知恵なく、ふりを装い、結果、結果と言い立てる国政から自治組織に至るまでの惨憺たる現状は、笑うしかない。

 

性急に何やらの学問をすすめる愚、軽佻浮薄に学問に飛びつく愚、いっとき学問の戒めを。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読

http://shaks.jugem.jp/ 

 

 

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