シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
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共感−『ハムレット』1幕2場

 

いつまで続くのか10代のいじめ、子どもたちを教える者の死んだほうが楽と思えるような過重労働、中高年を襲うストレスと孤立。

 

この事態に誰も関与し ようとしない、助けようとしない、同質性を求める現政権には現場感覚がない、苦しんでいる者に手を差し出す発想がない。

 

この国の病状は深刻で、医者や専門家に任せるしかないが、専門家の繰り言評論には弱者と伴走する気概はない、医学部不正入試、無給で働かされる研修医制度、医療現場で身を酷使している医者には社会病理を究める余裕はない。

 

処方箋を描けない私はもちろん無能だが、わずかな教育の現場体験と内外での観劇体験があるために、演劇的に国政問題から教育問題まで解決できると妄想する。

 

出雲大社の巫女として念仏踊りを勧進した阿国が京都の四条河原に小屋を建て、十字架を首に巻いて「ややこをどり」、つまりかぶきをどりを興行したのはシェイクスピアの時代、没したのもシェイクスピアと同じ頃、徳川家康はシェイクスピアと同じ1616年の没、日本におけるキリスト教布教活動、おそらく宗教劇上演に阿国が影響を受けて踊り出し、それがいまの歌舞伎の原型を形づくった、そんな比較の視点からシェイクスピアの言葉を東の果ての江戸前期に繋いで面白がる、そんな頭を巡らせて、日本はこんな方向に、日本人はこのように心豊かに生きるべきだ、などと立ち入りたくなる、よせばいいのに。

 

ハムレットの 「ああ硬い硬いこの肉体、溶けて、消えてしまえばいい」のくだりを読めば、ハムレットの内面を言葉と表情と仕草を想像させられ、その心情に手を届かすことができる気分になって、ハムレットに共感できるならボケーッと生きてんじゃねえよと、江戸文化とルネサンス文化の比較研究ができれば、日本列島の閉塞状況を吹き飛ばすことができるんじゃないだろうかなどと。

 

真に欲する共感性ある言葉を体に与えないでいると実は萎えてくる、生きているのが嫌になってくる。

 

人を知り、人を愛することの歓びを教えてくれるのは言葉なのだ、共感できる言葉を通して私たちは人と世界を共有することができるようになる。

 

言葉の学習から逃げ回っていたら、世界はその姿を見せてはくれないし、心が愛に満たされることはないし、生きて行く道筋を見出すこともできないのではないか。

 

大人が子どもに言葉の大切さを教えなかったら、人を愛することを教えなかったら、その子は自分を傷つけ、人を傷つけ、社会に牙を向けるようになるのではないか。

 

一人の若者が試されている、立派な優等生的生き方を目指して中世人として悩み、近代人として肉体、精神、言葉の限界を超えようとしたこの若者は、不満や恨みのために人とこの世を呪っている、繰り出される数々の憂鬱なストーリー。

 

 

王妃 母の願いを無にしないでハムレット

 私たちとここにいて、ウィテンベルクに行かないで。

ハムレット せいぜい留まることにしましょう

 お言葉に従って。

王 それはうれしい、ありがたい、

 デンマークでは私たち同様に振舞うがよい。さあ后よ、

 ハムレットのやさしい同意を得て

 心が晴れた。光栄に応えて

 酒杯を挙げデンマーク王が乾杯するたびに、

 祝砲を雲の上まで轟かせよう、

 王の酒宴の歓声に、天もこだまして、

    地上の雷鳴となって返してくるだろう。行くぞ。退場し

   ハムレットのみ残る。

ハムレット ああこの硬い硬いこの肉体、溶けて、

 崩れて、露になってしまうといい。

 あの永遠の神の掟が

 自殺を禁じていなければ。 ああ神様、神様!

 何て煩わしく、味気なく、陳腐で、無駄なんだ

 この世のいとなみの何もかもが?

 厭だ?ああ厭だ、厭だ、雑草伸び放題の庭が

 種を落とす。汚臭を放って、はびこる

 我が物顔に。こんなことになろうとは。

 亡くなってふた月。いや、ならない。ふた月には、

 立派な王だった、言ってみれば

 ヒペリオンとサチュロスの違い。母上を愛し、

 空を吹き渡る風すら許さなかった

 母上の頬に吹きつけるのを。それがどうだ

 忘れられるか。父上の肩に寄りすがって、

    ますます愛が募るようだった

 満たされるほどに。それがひと月と経たぬうちに? 

 考えたくない。弱き者、その名は女。

 ほんの一月前、あのときの靴が擦り減りもしないうちに、

 父上の亡骸に取りすがって

 ニオベのように、涙に暮れていた。その母上が、母上が。

 (ああ天よ!道理を知らないけだものでも

 もっと長く悲しむだろうに)叔父と結婚した、

 父上の弟と。父上とは似ても似つかない、

 俺とヘラクレスほどに違う男と。ひと月も経たぬうちに? 

 空涙の塩の跡が

 赤く泣きはらした目にまだ残っているのに、

 結婚した。ああ何という慌ただしさ、

 こんなにも早く近親相姦の床に急ぐとは。

 よくない、いいことが起こるはずがない。

 だが胸が裂けても、黙っていなくては。

 

                                                 1幕2場 

 

 

Qu. Let not thy Mother lose her Prayers Hamlet:

 I prythee stay with vs, go not to Wittenberg.

Ham. I shall in all my best

 Obey you Madam.

King. Why 'tis a louing, and a faire Reply,

 Be as our selfe in Denmarke. Madam come,

 This gentle and vnforc'd accord of Hamlet

 Sits smiling to my heart; in grace whereof,

 No iocond health that Denmarke drinkes to day,

 But the great Cannon to the Clowds shall tell,

 And the Kings Rouce, the Heauens shall bruite againe,

 Respeaking earthly Thunder. Come away. Exeunt

  Manet Hamlet.    

Ham. Oh that this too too solid Flesh, would melt,

 Thaw, and resolue it selfe into a Dew:

 Or that the Euerlasting had not fixt

 His Cannon 'gainst Selfe-slaughter. O God, O God!

 How weary, stale, flat, and vnprofitable

 Seemes to me all the vses of this world? 

 Fie on't? Oh fie, fie, 'tis an vnweeded Garden

 That growes to Seed: Things rank, and grosse in Nature

 Possesse it meerely. That it should come to this: 

 But two months dead: Nay, not so much; not two,

 So excellent a King, that was to this

  Hiperion to a Satyre: so louing to my Mother,

 That he might not beteene the windes of heauen

 Visit her face too roughly. Heauen and Earth

 Must I remember: why she would hang on him,

 As if encrease of Appetite had growne

 By what it fed on; and yet within a month?  

 Let me not thinke on't: Frailty, thy name is woman.

 A little Month, or ere those shooes were old,

 With which she followed my poore Fathers body

 Like Niobe, all teares. Why she, euen she. 

  (O Heauen! A beast that wants discourse of Reason

 Would haue mourn'd longer) married with mine Vnkle,

 My Fathers Brother: but no more like my Father,

 Then I to Hercules. Within a Moneth? 

 Ere yet the salt of most vnrighteous Teares

 Had lef the flushing of her gauled eyes,

   She married. O most wicked speed, to post

 With such dexterity to Incestuous sheets:

 It is not, nor it cannot come to good.

 But breake my heart, for I must hold my tongue.

 

     grace = honor    bruite = loudly echo    Manet ( L.)= remains    resolue =

     dissolve    Cannon = law    vses = customs   meerely = entirely   

    Hiperion = the sun god  Satyre = the wine god, Bucchus 

    eteene = permit    ere = before      gauled = inflamed     post = hurry

 

 

苦悩はすべて自分を中心につくられた客体物に過ぎない、目に見えるものすべては仮相の世界、幻想に過ぎない、客観的な事物と言えるものはこの世に存在しないのだから、けれども自意識の強い若者には何もかもが絶望的なセルフストーリーになる、この世は関節が外れている、ように見える、攻撃的になるしかない自分に悩み、苦しみ、いっそ死んだほうがましとさえ思ってしまう。

 

あやふやな外部客体へのかかわりを断つ涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)は、キリスト教で言う宇宙の本体と自分を同一化させて自己に執着しない生き方を説く無我(空)と同じであろう、この心の静まった安らぎの境地に入れば、自ずとホメオスタシス(自律神経、内分泌線、精神のバランス)が機能し、この身を圧し潰そうとする外敵に反撃して異物を体外に排出してくれるかもしれない。

 

薬もサプリも処方を間違えば毒になる、ホメオスタシスを狂わす恐るべき副作用という名の外敵。

 

この世に人間精神の限界を超える魔法などはない、世直しの処方箋もない、医療的宗教的に伝達されるべき策も実はない、だから自己治癒力を高めてこの世と折り合うしかない、神仏に祈りながら。

 

いまある世界をそのまま受け入れることはできそうにない、ならば視野を広げて大きな想像の世界を生きるしかないだろう、そう祈って劇作家はハムレットという共感できそうな人物を描いて、大方には予想もできない一手を差し出してみせたのです。

 

舞台には多様な声が人と人、人と社会の関係のなかで交わされますが、ハムレットのなかにも多様な声が。

 

それらの声には複数の視点が備わり、多様な対話があり、独白があり、錯綜してこちら側に伝えられてきます。

 

それら複数の声は、小さな世界に閉じ籠っていたり、閉じ籠っておれなくなって、目を外に向け不満や恨み辛みを言い立てる、けれどもそれらを否定する自分もいて変節して止まない。

 

そんな不分明、曖昧なものは個々別々に存在しているのでなく、ぜんぶひとつながりに繋がっている、ハムレットはいつしかそのような自己認識を得ます。

 

苦悩する一人の若者のこれらのせりふに感情移入して朗読すれば、免疫システムの一つくらいは作動するはず。

 

こんな気づきを英語で言えばパセプション、すなわち percertion ← perceive 、気づく、知覚する、認識する、完全に受け入れる、per は完全に、ceive は摑むの意。 

 

多声を生きる、そんな離れ業やってのけることができるならば、もはやちっとやそっとのことで病院なんかには行かなくなるだろう、薬はもらわない、サプリメントには頼らない、ヒーリングを受けない、健康グッズを買わない、この命は自分の免疫細胞で支えるんだ、自分の意志一つで、そんな一歩を踏み出す勇気も湧いてくるのではないか。

 

自分を傷つけ人を傷つける必要などはない、この世に復讐するものなど何一つありはしない。

 

矛盾を抱えて死んだハムレットと共に死ぬ、舞台の上で、そして蘇生する、蘇生すれば、そう、Do for Others、そんな天来の声も聴こえてくるのではないか。

 

ボランティア活動が待っているのではないか。

 

世のため人のために尽くすことが自分に尽くすことになる、それこそが新しい世界に生きる新しい自分の姿なのだろう。

 

新たな世界は滅多なことでは姿を見せてくれない、だから気づかない、気づこうとしないこの身の不明を恥じ、心を高く押し上げてくれる言葉を摑み取ろう、共感できる言葉を得て、考えやものごとを明確な形に、心を励ます楽しいストーリーに、そのために溌剌とした元気な体を取り戻したい。

 

汗をかくことを歓べる体づくりに精出せば硬い体も緩む、朝が来れば歓びに胸を開き、大空を仰ぐことができるのではないか。

 

ハムレットを伴走者として。

 

 

シェイクスピア朗読教室

http://shaks.jugem.jp/ 

 

 

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