シェイクスピア朗読

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パロディーは変幻自在ー『嵐』2幕2場

 

シェイクスピア劇がポスト・モダンと呼ばれる大衆文化のなかで拡散し、変容し続けています。

 

『ロミオとジュリエット』をインターネットで検索すれば分かるように、この作品がミュージカル、映画、オペラ、漫画、アニメ等々に戯画化、漫画化されて、パロディーとして変幻自在に。

 

知的権威の崩壊などとは言わないが、社会風俗に組み込まれたジェンダー制度や中二病と言われる情緒不安がシェイクスピアをネタに作品が好き勝手に翻案され、文化記号として強力な磁場のはたらく市場用に標準化されてきています

 

モダーンイングリッシュの集積されたシェイクスピアの原文テクストの持つ意味、機能、画一化されることのない個別性が忘れられていいのか。

 

原文にはアクセスできないが文化記号には手を出せる、この手の安手の商品化は文化一般の機能を狂わせることにならないか。

 

閉じられた社会で記号と化した文化アイコンは、偏狭なナショナリズム、政治的全体主義に利用されることがあることは、歴史を振り返れば分かります。

 

こんな調子でことばが簡素化され、無化され、思考停止が起こり、政治も、経済も、教育も、何もかもが平準化され、劣化して行っていいのか。

 

遠い過去からの蓄積を吟味し直すことが私たちの課された宿題ではないのか。

 

シェイクスピアを学び損なったら、この国の英語教育の惨状を見るにつけ、外国語教育によるグローバルマインドを持った地球市民育成教育は瓦解する、ばかりではないだろう。

 

言語活動の衰退は亡国を招く、ネット社会では御覧のように若者は本を読まなくなる、考えなくなる、自分の言葉で話さなくなる、右に倣えの味も素っ気そっけもないご挨拶の画一化、どうもすみませんでした、国のたそがれがもうそこに。

 

知的文化の基盤そのものの揺らぎに対しては断乎対処しなければなりません。

 

選ばれた自意識肥大の指導者たちは、近隣諸国との軋轢を空疎な美辞麗句で糊塗、あるいは強がってみせる、途方もない財政赤字など知らぬ存ぜぬ、人口減少下での社会保障強化は棚上げ、同時多発的に広がる統計不正はデータそのものの収集プロセスの偽装、疑問を投げかけてもそれは違いますと一蹴、無教養を曝け出して恥じない、歯止めのかからない児童虐待へのお寒い対応、これら国家存亡にかかわる問題に空疎な言葉で説得を試みる毎回お馴染みのパロディー政治劇、質の悪い変幻自在の漫画にしか見えない。

 

政治家は一滴の酒で国民を酔わせようとするが、一滴の目的が問題の所在ぼかしと論点のすり替えなら、神様なんかにはなれない。

 

こちらの漫画はどうか。

 

 

キャリバン 虐めないで。ああ。

ステファノー 何だ?

 悪魔でもいるのか?

 からかおうってのか野蛮人を使って、

 インド人か?え?俺が溺れずに助かったのは、おめえのような

 4本足を怖がるためじゃねえ。俺は言われてきたんだ。

 4本足の人間に匹敵するってよ、負けるわけ

 ねえだろ。今だってそうよ、このステファノー様が

 鼻で息をしているかぎりはな。

キャリバン 妖精の奴が虐めるう。ああ。

ステファノー 島の化け物か、4本足の。

 こいつは(何だな)マラリアにやられたんだ。一体どこで

 俺たちの言葉を覚えたんだ?助けてやるか

 喋っているから。こいつを治して、

 飼い慣らして、ナポリに連れて帰りゃ、献上品になる

 立派な革靴を履くどんな王様にだってよ。

キャリバン 虐めないでよ。これからは

 もっと早く薪を運ぶから。

ステファファノー 発作を起こしてやがる。喋れねえからな

 まともには。一杯飲ませてやるか。酒の味を知らねえ

 なら、発作もいちころよ。

 こいつを治して、飼い慣らせば、いくら高く売ったって

 高すぎるってこたあねえ。飼いたいやつに金を出させてやる、

 しこたまによ。

キャリバン おまえまだ手を出さないな。これから出すんだろ、

 分かるんだブルブル震えてっから。プロスペローが乗り移ってん

 だろう。

ステファノー いいから。口を開けな。さあ

 猫も喋り出すってお神酒だ。さあ

 口を開けな。これを飲みゃ震えなんざ吹っ飛ぶ、いや、

 ほんと。友は遠方より来るってな。開けな

 顎をもう一度。

トリンキュロー あの声は聞き覚えがある。

 確か、

 でもあいつは溺れ死んだ。こいつら悪魔か。ああ

 神様お助けを。

ステファノー 足が4本に口が二つか。できすぎだぜ

 化け物にしちゃ。前の口はよく言うよな

 友だちのことを。後ろの口は、口汚くののしる、

 友だちのことを。俺の酒をたっぷり飲ませて治せる

 もんなら、治してやりてえよね。さあ。そうだ、

 後ろの口にも飲ませてやろう。

トリンキュロー ステファノー。

ステファノー 後ろの口が俺の名前を?おい、おい。

 こいつは悪魔か、化け物じゃなくて。逃げるかな、

 悪魔のお相手はごめんだ。

トリンキュロー ステファノーステファノーなら、触ってくれ、

 物を言ってくれ。俺はトリンキュローだ。怖がるな、お前の

 親友のトリンキュローだ。

ステファノー トリンキュローなら。出てこい。引っ張ってやる

 小さいほうの足を。どっちかがトリンキュローの足なら、

 こっちだろう。確かにトリンキュローだ。どうして

 こんな化け物の糞なんかになったんだ?

 こいつは尻からトリンキュローをひり出せるのか?

トリンキュロー こいつ雷にやられたんじゃねえか。けど

 溺れ死んだんじゃねえんだなステファノーは。どうやら

 溺れ死んだんじゃねえようだ。嵐は静まったのか?潜り込んだのよ

 このおっ死んだ化け物の上っ張りに、怖くってよ

 嵐が。お前生きてんだよなステファノー?ああステファノー、

 これでナポリ人が二人助かったってわけか?

ステファノー おいおいぐるぐる回すな、胃袋が

 目を回す。

キャリバン こいつらたいへんな代物だ、妖精じゃないとなると。

 あっちは素敵な神様、天国のお神酒を持っている。

 あっちに跪こう。

 

                 2幕2場

 

 

Cal. Doe not torment me: oh.

Ste. What's the matter?

 Haue we diuels here?

 Doe you put trickes vpon's with Saluages, and Men of

 Inde? ha? I haue not scap'd drowning, to be afeard

 now of your foure legges: for it hath bin said; as pro-

 per a man as euer went on foure legs, cannot make him

 giue ground: and it shall be said so againe, while Ste-

 phano breathes at' nostrils.

Cal. The Spirit torments me: oh.

Ste. This is some Monster of the Isle, with foure legs;

 who hath got (as I take it) an Ague: where the diuell

 should he learne our language? I will giue him some re-

 iefe if it be but for that: if I can recouer him, and keepe

 him tame, and get to Naples with him, he's a Pre-

 sent for any Emperour that euer trod on Neates-leather.

Cal. Doe not torment me 'prethee: I'le bring my

 wood home faster.

Ste. He's in his fit now; and doe's not talke after the

 wisest; hee shall taste of my Bottle: if hee haue neuer

 drunke wine afore, it will goe neere to remoue his Fit:

 if I can recouer him, and keepe him tame, I will not take

 too much for him; hee shall pay for him that hath him,

 and that soundly.

Cal. Thou do'st me yet but little hurt; thou wilt a-

 non, I know it by thy trembling: Now Prosper workes

 vpon thee.

Ste. Come on your wayes: open your mouth: here

 is that which will giue language to you Cat; open your

 mouth; this will shake your shaking, I can tell you, and

 that soundly: you cannot tell who's your friend; open

 your chaps againe.

Tri. I should know that voyce:

 It should be,

 But hee is dround; and these are diuels; O de-

 fend me.

Ste. Foure legges and two voyces; a most delicate

 Monster: his forward voyce now is to speake well of

 his friend; his backward voice, is to vtter foule speeches,

 and to detract: if all the wine in my bottle will recouer

 him, I will helpe his Ague: Come: Amen, I will

 poure some in thy other mouth.

Tri. Stephano.

Ste. Doth thy other mouth call me? Mercy, mercy:

 This is a diuell, and no Monster: I will leaue him, I

 haue no long Spoone.

Tri. Stephano: if thou beest Stephano, touch me, and

 speake to me: for I am Trinculo; be not afeard, thy

 good friend Trinculo.

Ste. If thou bee'st Trinculo: come foorth: I'le pull

 thee by the lesser legges: if any be Trinculo's legges,

 these are they: Thou art very Trinculo indeede: how

 cam'st thou to be the siege of this Moone-calfe? Can

 he vent Trinculo's?

Tri. I tooke him to be kil'd with a thunder-strok; but

 art thou not dround Stephano: I hope now thou art

 not dround: Is the Storme ouer-blowne? I hid mee

 vnder the dead Moone-Calfes Gaberdine, for feare of

 the Storme: And art thou liuing Stephano? O Stephano,

 two Neapolitanes scap'd?

Ste. 'Prethee doe not turne me about, my stomacke

 is not constant.

Cal. These be fine things, and if they be not sprights:

 that's a braue God, and beares Celestiall liquor: I will

 kneele to him.

 

  Ague = a fit of fever   after = in the manner of   siege = excrement

    vent = defecate    braue = excellent

 

 

このパロディーなら少なくとも知的に笑えるんじゃないか。

 

自信ありげな現代のステファノ―は肝心の中身から離れて饒舌に話し、状況をさらに低く陰湿に複雑にしている。

 

無思慮なためらいのない説得などに百薬の長の効き目などあろうはずもない。

 

ポリティックスは国および社会集団における秩序の形成とその解体をめぐってのせめぎ合いだから、創造と破壊の睨み合い、繰り返しとなる。

 

つくっては壊す新陳代謝がうまくいかなくなれば、活力は失なわれ、ブルブルの発作が起こる、停滞と滞留、要するに糞をひり出せない糞詰まり状態になり、悶死するしかない。

 

法、権力、政策、自治にかかわる諸現象は刻々と変化する、この変化を相手に強引に一撃処理しようとしても、現実の変化に対応できるはずがない。

 

脳の負担が増えて間違うのか、頭に近いところにある目や耳などが聴き間違い見間違いをするのか、見ていながら見えない、聴いていながら聴こえない状態、知力低下、五感は摩耗、本能も消滅する。

 

こうなると4本足の化け物になるしかない、前途にどんな取り返しのつかないことが待ち受けていても、見えない、聴こえない、五里霧中の闇の中、虎になって咆哮するしかないんじゃないか。

 

オリンピックだ、世界一だなどと未来がよく見えるようなことばかり言っていると、とんでもないことになるだろう。

 

ふりの横行する状況のなかでことの本質を突くのは動物的察知能力だ、皮膚感覚によって、たとえば富が公平に人びとに及んでいるかどうかという判断は、あれこれの気配で察知できる。

 

脳に意識や自律神経の偏りや無理が加わると、その人の表情は硬く、きつく、品悪く、不健康そのものに、見れば分かる。

 

身体は頭で考えることに合わせようとしてシグナルを送りつけてきます、目や耳や皮膚が機能不全に陥った物言いをすると是正しようとします、この身体からのシグナルはもう届かないのか、届いても取り違えるのか、

 

心底笑えるものに、泣けるものに、接しよう、シェイクスピアを読み直して創造と破壊が一体のものであることを感じ取ろう、脳を虐める弁論術や説得術は後回しにして。

 

笑えない下手なパロディー劇はもうおしまい。

 

 

シェイクスピア朗読教室

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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