シェイクスピア朗読

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クレオパトラのワインー『アントニーとクレオパトラ』5幕2場

 

プラごみと鉛の処理がうまくいっていないんですね。

 

ベートーベンが耳が聴こえなくなったのは鉛が原因で、毛髪から通常の百倍近い鉛が検出されたそうです。

 

原因はワインに用いられた酢酸鉛で、当時安物のワインの醸造過程で甘味料として加えられていたのです。

 

甘いワインをがぶ飲みしていたベートーベンは、いつもお腹の具合いが悪く、最後は肝硬変になって、死に至ったらしい。

 

古代ローマ時代には水道管に鉛管を使い、ワイン保存に鉛を添加していたために、深刻な鉛中毒が起こって、亡国の原因になったと言われています。

 

いまゴミを徹底リサイクルしようとしても、古い家電などに鉛が入っていて、うまくリ処理できないのです、飛び散ってしまって。

 

私は信州塩尻産の井筒ワインをチビチビ舐めていますが、こちらは大丈夫、たぶん。

 

いままでプラごみは中国に搬送、古い電化製品は廃棄されて、燃えないゴミとして、あっちこっちに埋め立てられていたのです。

 

そこに雨が降る、工場の排煙(鉛が含まれている)で汚染された酸性雨が降る、雨は埋め立て地の鉛を溶かして土を汚染する、汚染水は地下水に沁み込み、汚染水は降り続く雨によって川と海に流れ込み、そこに棲む魚に鉛が蓄積する、こうして土壌から始まった汚染は地球の生態系を壊し続けてきたのです。

 

恐ろしいのはその蓄積性で、人体に吸収された鉛のほとんどは骨に沈着して、容易に排出されず、中毒症状を起こして、疲労感、不眠、便秘、神経過敏、頭痛、精神異常が起こり、鉛はブーメランのように回転して私たちの心身を直撃してくるんですね。

 

大気汚染を怖れてではないが、最近は上野にも、渋谷にも、日比谷にも、紀尾井町にも、人の集まるところにはあまり出かけません。

 

でもね、テレビのコンサート番組は別、先日、2019年4月公演のN響定期演奏会をEテレで観ました。

 

指揮はヤクブ・フルシャ、ソプラノ独唱がヴェロニク・ジャンス、曲目はR.シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」、ベルリオーズの「クレオパトラの死」、そしてヤナーチェクのシンフォニエッタ。

 

そのなかで「クレオパトラの死」がドラマティックでよかった、パチパチ。

 

クレオパトラの独白という形で、長身で、細身、赤いロングドレス姿のジャンスさんのソプラノの独唱が際立った。

 

クレオパトラには毒蛇に身を嚙ませて死んだというエピソードが残っていて、若き日のベルリオーズがこの部分を曲にしたのです。

 

シェイクスピアにも『アントニーとクレオパトラ』があり、この場を想像力豊かに次のように表現しています。

 

 

クレオパトラ 礼服をとって、王冠を被らせて、私はもう

 エジプトの葡萄の汁でこの唇を潤すことはない。

 さ、早く、アイラス。早く。聴こえるのよ

 アントニーが呼んでいるの。身を起こして

 私の立派な行為を褒めているわ。笑っている

 シーザーの幸運を、神々が与えてくださったのよね

 怒った後は赦してあげなさいって。あなた、いま行きますよ。

 さあ夫の名にかけて、勇気を出して私の称号を証明しなきゃ。

 私はいま火よ、空気よ。私の他の元素は

 卑しいこの世に遺して行きます。どう、すんだ?

 さあ、私の唇からお別れのキスを受け取ってね。

 私の唇に蛇の毒がついていたの?倒れちゃって?

 お前と、命がこんなにやさしく別れられるんなら、

 死神に殺されるのは恋人に抓られるようなもの、

 ちょっと痛いけど、いいわよね。まだ倒れているの?

 こんな風に死ねるんなら、世間に教えてあげなきゃ、

 死なんてさよならを言う値打ちもないわよって。

 

                5幕2場

 

 

Cleo. Giue me my Robe, put on my Crowne, I haue

 The iuyce of Egypts Grape shall moyst this lip.

 Yare, yare, good Iras; qui>Anthony call: I see him rowse himselfe

 To praise my Noble Act. I heare him mock

 The lucke of Caesar, which the Gods giue men

 To excuse their after wrath. Husband, I come:

 Now to that name, my Courage proue my Title.

 I am Fire, and Ayre; my other Elements

 I giue to baser life. So, haue you done?

 Come then, and take the last warmth of my Lippes.

 Haue I the Aspicke in my lippes? Dost fall?

 If thou, and Nature can so gently part,

 The stroke of death is as a Louers pinch,

 Which hurts, and is desir'd. Dost thou lye still?

 If thus thou vanishest, thou tell'st the world,

 It is not worth leaue-taking.

 

  Yare = Briskly    qui>  =  quick       Aspicke = Asp  

 

 

私はもうエジプトの葡萄の汁でこの唇を潤すことはない、女王はベートーベンのようにワインをがぶ飲みしていたのか。

 

ここに出てくるシーザーはジュリアスではなくて執政官のオクテヴィアス・シーザー、クレオパトラはもう一匹の毒蛇も胸にあてがい夢を見るようにこと切れるのです。

 

ジャンスは20分間フランス語で母音と子音を明瞭にうたい続けて絶望と諦観を、弦、管、打の音が静まるなかで敗北と栄光を語り、かつての日々を思い出します、ナイル、ファラオ、イシス、オシリス、ピラミッドという声を濃く薄く残して、そしてさいご、声にならない声でうたい続けて消えて行ったのです。

 

クレオパトラのワインという伝説があって、ティエポロが『クレオパトラの饗宴』(1744)にワインに真珠を溶かして飲むクレオパトラを描いています。

 

ワインが酸化してワイン・ビネガー(酢)になると、真珠が酢酸に反応して溶け、ワインのなかの酢酸が消えて炭酸ガスと水になりアルコール分が残る、つまり、クレオパトラは当時の酸化するワインを再生させて飲んでいた、こういうことになるんですね。

 

真珠はほんとにワインに溶けたのか、お腹を壊すことはなかったのか、ちょっと気になりますね。

 

もっと気になるのは今回の参院選、不穏な政治・社会情勢のなかで国のかたちを変えるような国民的議論がまたまたはぐらかされようとしている。

 

候補者に土や水を問う意識がない、社会保障と安全保障の真のあり方を問う人格教養がない、閉ざされつつある人間の未来を憂う顔がない。

 

人間の劣化が際立ち、この世が醜い卑しいものになってきました。

 

 

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