シェイクスピア朗読

シェイクスピアについて徒然に綴るブログです
三色スミレ―『夏の夜の夢』2幕2場

 

五色(ごしき)の短冊が川に流されて(今は流せないか)思い出されるのが三色菫(さんしきスミレ)。

 

春、ヴェランダの雑草園に薄紫のタチツボスミレ(立坪菫、学名:Viola grypoceras)の花が咲き、いまは10 センチルほどに伸びた茎に丸っこいハート型の葉っぱが。

 

こちら日本原産のスミレですが、スミレには種類が多く、葉っぱの形や茎で識別するのです。

 

西の玉座に君臨する美しい処女(エリザベス1世)を狙ってキューピッドの弓から放たれた矢は、妖精の王オ―ベロンに遮られて乳白色のスミレの花に落ちました。

 

射抜かれて深紫に変わったこの花は Love in idleness(ぶらぶら遊んでいるキューピッドの意)と呼ばれるパンジーの原種ビオラ・トリコロール(英語で three colour )、つまり三色スミレ、春から夏にかけて白、黄、深紫の花を咲かせます。

 

夏至祭が行われる6月24日(Midsummer Day)の前夜、若い男女は森に出かけ、露や薬草を集める習わしがありました。

 

森には悪戯好きな妖精もいて、若者たちに三色スミレの絞り汁が降り撒かれることもあったようです。

 

『夏の夜の夢』(1595)に登場する妖精パック(Robin Good-fellow)は目隠しされたキュ―ピッド役、こんなことを言っています。

 

 

 森じゅうあちこち走り回ったが、

 アテネの男は見当たらない、

 そいつの目蓋に花のつゆを塗り

 媚薬の効果を見たいのに。

 夜だ静かだな―誰だ?

 アテネの服を着ている。

 こいつだな(王様が言っていたのは)

 アテネの娘を振ったやつだ。

 ここで眠り込んでいるのが相手の娘か、

 湿った汚い地べたに。

 可哀そうに、近くには寄れないってか

 薄情な男の傍には、この礼儀知らずめ。

 無礼者、こいつの目ん玉に

 ありったけの魔法をかけてやろう。

 目を覚ましたら、はいそれまでよ

 寝食忘れる恋患い。

 おいらが行っちまったら目を覚ましな。

 オ−ベロン様に報告しなきゃ。

 

            2幕2場

 

 

Puck. Through the Forest haue I gone,

 But Athenian finde I none,

 One whose eyes I might approue

 This flowers force in stirring loue.

 Night and silence: who is heere?

 Weedes of Athens he doth weare:

 This is he (my master said)

 Despised the Athenian maide:

 And heere the maiden sleeping sound,

 On the danke and durty ground.

 Pretty soule, she durst not lye

 Neere this lacke-loue, this kill-curtesie.

 Churle, vpon thy eyes I throw

 All the power this charme doth owe:

 When thou wak'st, let loue forbid

 Sleepe his seate on thy eye-lid.

 So awake when I am gone:

 For I must now to Oberon.

 

  approue = test     durty = dirty    durst⦅古⦆dareの過去形   

      Churle = Rude fellow      owe = own

 

 

妖精の王と女王は夫婦仲がよろしくない、インドから連れてきたボーイを后が独占しているのが王には気に食わないのです。

 

妖精界のそんな険悪な雰囲気のなかに駆け落ちしてきたのが若いカップルとそれを追いかけてきた別のカップル。

 

三色スミレの一滴が間違って彼らに塗られて、アテネの森に一夜の恋の大騒動が繰り広げられる展開に。

三色スミレは3月7日誕生日の花で、花言葉は「物思い」や「私のことを忘れないで」というもの。

 

タチツボスミレの葉っぱはハート型、三色スミレともども、春から夏にかけて物思いに耽ること多く、私のことを忘れないでねと訴えています。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読                 

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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大騒動―『夏の夜の夢』3幕1場

 

鬱陶しい梅雨空の下の秋葉原駅前街頭演説の大騒動、帰れコールに憤激して「誹謗中傷するこの人たちに私たちは負けるわけにはいかない」?

 

総理のご意向を見事に可視化させて歴史的惨敗を喫した今回の都議選。

 

官房長官は記者会見で「私たち」「この人たち」の発言について問われると冷ややかに「きわめて常識的な発言」と言ってのけました。

 

汗じっとりの天候が鬱陶しい、情報操作と守秘義務を持ち出す居丈高な政治が鬱陶しい、耳に迫る蚊が鬱陶しい、小さな蟻んこが鬱陶しい、家庭分断、家族崩壊が鬱陶しい、男女の惚れた晴れたの性急な物言いが鬱陶しい、メールでみせつける離別会見が鬱陶しい。

 

人の心は得体が知れない、始末に負えない、何やらにちょっと突っつかれただけで沸騰する、あらぬ夢を追いかける。

 

この季節、超自然界に生きる妖精は人間界のすったもんだを見て、人間ってなんて馬鹿なんだろうと見ているでしょう。

 

アテネの大公シーシュースとアマゾンの女王ヒポリタの結婚が4日後に迫った夏至祭の前夜、ハーミアとライサンダーは結婚を認めてもらえないために駆け落ちを決行、ハーミアを諦め切れないディミートリアスと彼に恋焦がれるヘレナが二人を追いかける。

 

溜息をつくヘレナを哀れんで妖精の王オーベロンがパックに命じてディミートリアスの目蓋に惚れ薬をと、ところがパックは間違えてライサンダーに塗ってしまい、間違いに気づいてディミートリアスにも塗ったために、ハーミアを恋する二人が今度はヘレナを追いかけ回す大騒動に。

 

無分別の最たるものが恋か、非日常的領域に踏み込む夢の世界、いや、狂気の世界。

 

聖バレンタインデー、5月祭り、夏至の祭りを合体させたような夏の夜の森にアクセスすれば、究極の人間の本性との繋がりが浮かび上がってくるような。

 

 

ティターニア 天使の声かしら花のしとねから目覚めさせるのは?

ボトム フィンチ、スズメ、ヒバリ、

 一本調子のカッコー。

 亭主どもを阿呆阿呆と笑うが

 誰も答えない、俺は違うぞなんて。

そりゃまあ、あんな阿呆鳥と誰が知惠比べする?

誰が鳥に嘘つきめと言い返せる、カッコー悪いと言われて、

俺は違うぞなんてよ?

ティターニア お願いやさしいお方、もう一度うたって、

 この耳があなたの歌声に聞き惚れているの。

 一目見ただけで誓わずにはいられない、愛しているって。

 この目はあなたの姿にうっとり。

 あなたの美力は(ビリリと)私の心を揺さぶるわ。

ボトム 奥さん、理性に欠けちゃいませんか

そこまで仰っては。もっとも正直な話、理性と

恋は相性が悪い、当節は。

残念至極、ご近所の正直者が仲に入って

仲直りさせてくれなきゃ。いやまあ、俺も冗談

のひとつくらいはね。

ティターニア あなたって頭もいいのね、美しいだけじゃなくて。

ボトム それほどでも。ただし知恵があれば

 この森から抜け出せるだけの、それで用が足りるんだが。

ティターニア 森から抜け出すなんて、そんな気は起こさないで、

 このままここにいて、あなたのお気持ちがどうあっても。

 私はただの妖精ではないの。

 私のまわりはいつも夏なのよ。

 その私が愛しているの。だから私と一緒にいなきゃだめ、

 お世話をする妖精たちを呼びましょうね。

 海の底から真珠を取ってこさせたり

 歌をうたわせたりしてね、花のしとねでお休みになるときは。

 そして私は人間としてのあなたのからだを追い払って

 妖精のように空を飛べるようにしてあげます。

 

                3幕1場

 

 

Tyta. What Angell wakes me from my flowry bed?

Bot. The Finch, the Sparrow, and the Larke,

 The plainsong Cuckow gray;

 Whose note full many a man doth marke,

 And dares not answere, nay.

 For indeede, who would set his wit to so foolish a bird?

 Who would giue a bird the lye, though he cry Cuckow,

 neuer so?

Tyta. I pray thee gentle mortall, sing againe,

 Mine eare is much enamored of thy note;

 On the first view to say, to sweare I loue thee.

 So is mine eye enthralled to thy shape.

 And thy faire vertues force (perforce) doth moue me.

Bot. Me-thinkes mistresse, you should haue little

 reason for that: and yet to say the truth, reason and

 loue keepe little company together, now-adayes.

 The more the pittie, that some honest neighbours will

 not make them friends. Nay, I can gleeke vpon occa-

 sion.

Tyta. Thou art as wise, as thou art beautifull.

Bot. Not so neither: but if I had wit enough to get

 out of this wood, I haue enough to serue mine owne

 turne.

Tyta. Out of this wood, do not desire to goe,

 Thou shalt remaine here, whether thou wilt or no.

 I am a spirit of no common rate:

 The Summer still doth tend vpon my state,

 And I doe loue thee; therefore goe with me,

 Ile giue thee Fairies to attend on thee;

 And they shall fetch thee Iewels from the deepe,

 And sing, while thou on pressed flowers dost sleepe:

 And I will purge thy mortall grossenesse so,

 That thou shalt like an airie spirit go.

 

    gleeke = make jokes   turne = purpose    rate = rank

       grossenesse = fleshly being

 

 

何ともはや、人間の意識の澱みを掬いとって劇は潜在意識の領域へ。

 

ボトムは身体を追い払われて頭は宇宙遊泳の気分にのぼせ上がるのか。

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読         

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人間不信―『アテネのタイモン』4幕1場

 

72年前の沖縄戦の犠牲者を悼む慰霊の日の23日、糸満市の平和記念公園で翁長知事は戦争の不条理と残酷さを体験した県民は平和な世の中を希求する心を強く持っていると言い、沖縄の民意を顧みずに工事を強行している政府を批判しました。

 

戦争の恐怖を実感し得ない世代の権力者の膨満感は目に余ります。

 

安倍首相、官邸、政権与党は「もり・かけ」問題で平然と嘘をつき、「共謀罪」を一般市民は捜査の対象にならないなどと詭弁を弄して強行採決し、国民の意向を下衆の勘ぐりと断じて議論の場を閉じてしまいました。

 

政治家不信、人間不信の上塗りが続くと人を極端な人間嫌い(misanthrope)に走らせることがあります。 

 

絶望と怒りは破壊的否定的感情を呼び起こしかねません。

 

シェイクスピアは前5世紀末のアテネの伝説的人間嫌いのタイモンにこんな風に言わせています。

 

 

 振り返ってもう一度見よう。ああ城壁よ

 狼どもを取り囲んでいる、大地に沈んでしまえ

   アテネなど守るな。結婚した女よ、不貞になれ、

 親に逆らえ子どもは。奴隷や阿呆は

 いかつい皺だらけの元老を引きずり下ろし、

 代わりに職に就け、売春宿の女将になれ。

 売女になれるぞ初々しい処女は、

 親の目の前でやれ。破産者は、やれ

 借金などは返さず、ナイフを抜いて、

 債権者の喉笛をかっ切ってやれ。奉公人は、盗め、

 真面目くさった旦那は大泥棒だ。

 法によって盗め、女中は、旦那のベッドに潜り込め。

 奥方は売女だ。16歳の息子は、

 よぼよぼの親父から松葉づえを引ったくり、

 その杖で、頭を叩き割れ、敬虔も、罪への恐れも、

 神々への信仰も、平和も、正義も、真実も、

 親への尊敬も、夜の休息も、隣人への愛も、

 教育も、礼儀作法も、工業も、商業も、

 位階も、従順も、慣習も、法律も、

 堕落して破滅をもたらす真逆のものになれ、

 破滅だけが続け。人間にとりつく疫病よ、

 お前の伝染性の強い熱を、積み上げ

 アテネを一撃しろ。座骨神経痛よ、

 元老どもにとりついて、足腰立たぬようにしろ

 マナー同様にびっこにしろ。淫欲、放縦よ

 若い連中の骨と髄に忍び込み、

 美徳の流れに逆らわせ、

 放蕩、浮気、膿疱に溺死させろ、

 全アテネ人の腹に種を撒き、稔らせろ

 ライ病の実を。ものを言えば、口から口へ伝染し、

 人との付き合いは(奴らの友情と同じ)

 毒の移し合いになれ。何も持っては行かぬ

 この裸身一つでいい、こんなアテネからは、

 これもくれてやる、てんこ盛りの呪いと一緒に。

 タイモンは森へ行く、そこで分かるはずだ

 残忍なけだものも、人間よりやさしいとな。

 神々よ呪ってくれ(聴き届けろ善良なる神々よ)

 あの城壁の内と外にいるアテネ人を残らず。

タイモンの胸に増大しますように、人間嫌いが

全人類に対して、日ごとにいや増しますように。

 

                 4幕1場

 

 

Tim. Let me looke backe vpon thee. O thou Wall

 That girdles in those Wolues, diue in the earth,

 And fence not Athens. Matrons, turne incontinent,

 Obedience fayle in Children: Slaues and Fooles

 Plucke the graue wrinkled Senate from the Bench,

 And minister in their steeds, to generall Filthes.

 Conuert o'th'Instant greene Virginity,

 Doo't in your Parents eyes. Bankrupts, hold fast

 Rather then render backe; out with your Kniues,

 And cut your Trusters throates. Bound Seruants, steale,

 Large-handed Robbers your graue Masters are,

 And pill by Law. Maide, to thy Masters bed,

 Thy Mistris is o'th'Brothell. Some of sixteen,

 Plucke the lyn'd Crutch from thy old limping Sire,

 With it, beate out his Braines, Piety, and Feare,

 Religion to the Gods, Peace, Iustice, Truth,

 Domesticke awe, Night-rest, and Neighbour-hood,

 Instruction, Manners, Mysteries, and Trades,

 Degrees, Obseruances, Customes, and Lawes,

 Decline to your confounding contraries.

 And yet Confusion liue: Plagues incident to men,

 Your potent and infectious Feauors, heape

 On Athens ripe for stroke. Thou cold Sciatica,

 Cripple our Senators, that their limbes may halt

 As lamely as their Manners. Lust, and Libertie

 Creepe in the Mindes and Marrowes of our youth,

 That 'gainst the streame of Vertue they may striue,

 And drowne themselues in Riot. Itches, Blaines,

 Sowe all th'Athenian bosomes, and their crop

 Be generall Leprosie: Breath, infect breath,

 That their Society (as their Friendship) may

 Be meerely poyson. Nothing Ile beare from thee

 But nakednesse, thou detestable Towne,

 Take thou that too, with multiplying Bannes:

 Timon will to the Woods, where he shall finde

 Th'vnkindest Beast, more kinder then Mankinde.

 The Gods confound (heare me you good Gods all)

 Th'Athenians both within and out that Wall:

 And graunt as Timon growes, his hate may grow

 To the whole race of Mankinde, high and low.

 

   steeds = steads     hold fast = refuse to pay  lyn'd = lined

  (= padded) Mysteries = Crafts     Sciatica = Nerve pain     

   halt = limp     Blaines = Sores     meerely = wholly     

   Bannes = Curses

 

 

気違いじみた欲の限りを目いっぱいに示してはいますが、シェイクスピアは何が大切かを考えさせようとしているのです。

 

私たちは日本社会の変貌ぶりにどう向き合ったらいいのか。

 

怒りはあるが、感覚の偏り、感情の偏り、思考の偏りはいけない、無用な衝突、争いは避けなければならない、そんな思いを込めて自分の本質的な部分、つまり自分軸で判断するしかありません。

 

その判断で自己免疫力は高まるか、ホメオスタシス効果を促せるか、自由や希望、しあわせを感じることができるか。

 

人間嫌いに陥らずに心をどうギアチェンジしたらいいか、タイモンの否定的感情と平和と愛と自由と信頼の肯定的感情のイメージを文字や絵で描いてみると具体的に見えてくるかもしれません。 

 

 

うちむらとしのりシェイクスピア朗読                 

http://shaks.jugem.jp/

 

 

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